2006年、デビューアルバムの「テイラー・スウィフト」を発表したスウィフトは、すぐさまその名前と音楽を世界に知らしめた。同アルバムはビルボード200で5位にランクイン、収録曲の中から5曲が40位以内に入っている。
特に「ティム・マックグロウ」によって彼女はカントリー・ミュージック界のアイドル的存在となった。出身地はカントリーの本場ナッシュビルであり、歌声がジャンルにマッチしているということもあったが、スウィフトには独自の持ち味があった。
アルバム収録曲の多くがポップス系ラジオでも流れるという、カントリー界としては珍しい現象も起きた。「ティアドロップス・オン・マイ・ギター」と「アワ・ソング」はいずれも甘いナンバーで、当時のラジオ局で重宝されたのだ。
「1989」は売上240億円
スウィフトはカントリーで地盤を作り上げて有名になったものの、世界的スーパースターとなり音楽業界で最も稼ぐ歌手となった理由はポップスへの傾倒だ。
デビュー2年目も人気が落ちることはなく、楽曲はチャート上位にランクインした。2008年の2枚目のアルバム「フィアレス」収録の「ラヴ・ストーリー」と「ユー・ビロング・ウィズ・ミー」はポップス系ラジオを念頭に置いて書かれた楽曲だが、カントリーの要素も全くないわけではない。同アルバムは初登場1位を記録し、数百万枚を売り上げた。グラミー賞ではブラック・アイド・ピーズやビヨンセを抑えて最優秀アルバム賞を受賞し世界を驚かせた。
その後数年間は音楽的にはカントリーとポップスでどちらつかずの時期だったが、楽曲は相変わらずチャート上位にランクインしていた。ビジネスパーソンとしても優秀なスウィフトは、生粋のカントリー・ミュージックから100%ポップ・ミュージックへの移行に時間をかけた。
「フィアレス」、「スピーク・ナウ」、そして特に「レッド」ではジャンルを超えた音楽を提供し、ヒットを飛ばしつつもこれまでとは違ったスウィフトをファンに受け入れてもらえるよう徐々に準備を進めていた。