ビジネス

2016.10.27

「ヒト」に投資を!従業員のモチベーションを高める人事システム

麻野耕司(Photo by Jan Buus)


組織開発の「PDSサイクル」をまわす

多くの企業で組織開発やエンゲージメント、モチベーション向上がうまくいかないのは、「ものさし(数値目標)」がないために、Plan(目標設定)→Do(進捗管理)→See(現状把握)というPDSサイクルが回っていないせいだ。事業活動にはP/L(損益計算書)や各種KPI(重要業績指標)といった「ものさし」があるが、組織活動に「ものさし」はなかった。感覚的、定性的に活動が進められ、失敗に終わることが多いのだ。

そこでモチベーションクラウドでは、組織活動にモチベーションインデックス(MI)という「ものさし」を持ち込んだ。

そして、それらの「ものさし」をもとにSee(現状把握)→Plan(目標設定)→Do(進捗管理)の順に組織改善を進めていく。

Seeは従業員を対象にした調査。132問の設問に20分程度で回答してもらう。結果を項目別、部署別、階層別などさまざまな切り口で分析すると、企業内のERM、モチベーション、コミュニケーション、マネジメントの状況が明らかになる。クラウド上にはリンクアンドモチベーションが過去に蓄積した2,350社50万人分のデータがあり、同業種や同規模の他企業との相対比較もできる。

Planでは、Seeで明らかになった状況をもとに、MIの目標数値と、それらを達成するためのアクションプランを定める。目標数値やアクションプランは企業全体のものだけでなく、部門、部署ごとに設定することでより効果が高まる。アクションプランは192個用意されており、組織改善についてノウハウを持たない現場のマネジャーでも対応できる。

Doでは、Planで設定したアクションプランの進捗管理を行う。現場のマネジャーは月次もしくは隔週で進捗状況をクラウド上で報告。その際、期限を知らせるアラート機能や経営陣、人事がコメントできるフィードバック機能が、確実なアクション実行を後押しする。

なお、過去のデータを調べると、PDSサイクルは、サイクルが1周するのに要する時間が短くなるほどMIが高くなる傾向にあった。そのため、モチベーションクラウドでは現在、ほとんどの企業が1年ではなく、1カ月から半年でPDSサイクルを回している。

いまアメリカのHR Tech界では、HR Techの活用主体が、従来の人事担当者から現場の従業員に移りつつある。モチベーションクラウドも、経営陣や人事担当者だけでなく、現場の従業員にも活用しやすいシステムとして開発している。

また、現在はPlanの段階でコンサルタントのサポートによって数値目標やアクションプランの設定が行われているが、将来的には人工知能(AI)を活用することで、より精度の高いプランニングが可能になりそうだ。人間のプロジェクトマネジャーの記憶力には限界があるが、AIを導入すれば、モチベーションクラウドに蓄積されたMIやアクションプランのデータ2,350社分(1社に20部門あるとすると47,000部門、53万人分)をいつでも活用できるようになる。

コンサルタント会社タワーズワトソンの2014年調査によれば、日本のエンゲージメント指数は先進国の中でも最低水準だ。企業に対して高いエンゲージメントを持っていると答えた従業員の割合は、世界平均では40%、アメリカは39%。日本は21%だった。モチベーションクラウドは、「ヒトが資源」であるはずのこの国の、そんな閉塞感を打破する可能性を持ったHR Techプロダクトなのだ。

麻野耕司◎リンクアンドモチベーション執行役員、ERMカンパニーカンパニー長。2010年、中小ベンチャー企業向け組織人事コンサルティング事業の執行役員に当時最年少で着任。著書に『すべての組織は変えられる〜好調な企業はなぜ「ヒト」に投資するのか〜』(PHP研究所)。

text by Koji Asano

この記事は 「Forbes JAPAN No.29 2016年12月号(2016/10/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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