センサで測り、AIで分析 日立が解明するチームの実態

日立製作所 研究開発グループ 辻聡美(Photograph by Jan Buus)

チーム内のコミュニケーションがうまく機能しない場面は多くある。日立製作所が開発した、チームワークを測るセンサとは?

組織内の「元気度」を可視化する。それを可能にするのが、日立製作所が開発したウェアラブルセンサだ。首から下げる名札に赤外線センサを埋め込み、対面コミュニケーションを計測する。加速度センサは歩行、デスクワークなどで生じる体の揺れを感知し、その膨大なデータを、AIが解析。チーム運営のヒントとして活用する。日立製作所 研究開発グループ 東京社会イノベーション協創センタの研究員、辻聡美は言う。

「対面コミュニケーションで誰と誰が会い、どのくらいの時間、話したのか。そうしたデータからわかるのが、『組織の元気さ』なのです」

この技術は現在、東京三菱UFJ銀行、日本航空、ネスレなどを含む日立製作所内外の100以上の部署に導入された。

コミュニケーションの状況は、下図のように可視化される。左は組織変更直後のチームが分断されている状態。右は数週間にわたってワークショップを実施した後に、現場レベルのコミュニケーションが活発になった状態を示している。辻は言う。



「コミュニケーションは、業種によっても違いがあります。正確さとスピードを要求される銀行のような組織は縦割りの傾向が強く出るし、創造性と柔軟性を重視するITベンチャーはフラットな横連携が多い。また、同じプロジェクトチームでもフェーズによって変わります。立ち上げたばかりの打ち合わせが多い時期、自分の作業を黙々と進めている段階などデータからチームの様子が見えてくるのです」

一方、人の動きがわかる加速度センサは、体の揺れから、歩いている、PCを操作しているーといった動きを計測。1秒間に50回、人の動きとその持続時間を調べる。

「全体的なストレスが高い組織では、無意識に身体が静止してしまう確率が上がることがわかりました」

人間の心理的な状況が、無意識の動きに表れるのだ。

その人やそのチームが、どんな時にどういう状態になるのか、元気に働くことができる環境作りの糸口を探る。辻は言う。

「センサで集めた行動データを、会話、出退勤、デスクワーク……というように細分化して組み合わせます。課長が午前中に会議に出席した。立ち話をした。デスクワークに集中した。こうした個別の行動履歴から組織活性度と相関するものを総当たりで探し出すのです。そこから相関のあった指標を整理して提示するところまでがAIの仕事。それが本当に意味を持つのかは、人間が判断することです。それぞれの組織の強みを見つけてマネジメントに生かす。それを現場で繰り返して習慣化することで、社員がもっと生き生き働く職場になるはずです」

文=大木戸 歩

この記事は 「Forbes JAPAN No.29 2016年12月号(2016/10/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事