1.3億人のメディア帝国狙うAT&T タイムワーナー9兆円買収の吉凶

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消費者メリットには疑問も

1億3,200万人の加入者を誇るAT&Tは今後、これらのタイトルを顧客らに独占コンテンツとして提供することが可能になる。

しかし、今回の買収が本当に成功をもたらすかどうかには疑問も残る。合併が果たして消費者のためになるものかどうかは、現時点では定かではない。また、規制当局が認可するかどうかも不透明で、少なくとも何らかの条件が課される可能性が高い。

今回の買収に関し、アル・フランケン上院議員は次のように述べた。「このような巨大企業同士の合併がうまくいくかどうか、懐疑的に見ています。消費者側にとっては選択肢が減って、料金の値上げやサービスの低下がもたらされるかもしれません」

過去を振り返ればタイムワーナーは合併で苦渋をなめた歴史がある。2000年当時、インターネットプロバイダとして急成長を遂げたAOLは1,600億ドルでタイムワーナーを買収した。しかし、この合併は失敗に終わり、結局2010年には2社は分離することになった。

また、コンテンツ業界は成長を遂げる一方、競争の激化も進行中だ。アップルも昨年からストリーミングTVへの進出を強化しており、一時はタイムワーナーと提携の話を進めているとの報道も流れた。

成長率の減速が伝えられたネットフリックスは先日の決算で、今年第3四半期で357万人の新規顧客の獲得を発表し、その不安を打ち消した。同社は独自コンテンツ制作予算を20%増加させ、2017年は60億ドルを支出すると発表した。

買収が正式に認可されたならば、AT&Tは「土管事業者」としての任務を終え、巨大メディア帝国としての歩みを始めることになる。競争が激化し、ダイナミックな変動を続けるこの分野で、この買収が成功と呼べるものになるかどうかは、今後のAT&Tの動きにかかっている。

編集=上田裕資

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