「私の父が家を出ていった時、母はすぐさま学業に戻りました」
10月19日、ロメッティは極めて個人的なエピソードを聴衆の前で披露した。
「母はその日、私たちを学校に送り出した後、自分の学校に向かいました。そして夜は働いていました。彼女は一生懸命に働きました。自分が運命の犠牲者と見られることを許しませんでした」
ロメッティはキャリア志向の女性たちに向け、困難に遭遇した時の心構えを説いた。「自分が何者であるかを決めるのは、他人ではありません。あなた方自身が自分を決定づけるのです」
ロメッティは1981年、IBMでシステムエンジニアとして働きはじめた。その後、キャリアの階段をのぼりつめ、2012年にIBMの社長兼CEO職の座についた。
彼女が今回の発言を行なったのは、テキサス州ヒューストンで開催されたテクノロジー業界の女性たちのイベント「Grace Hopper Celebration for Women in Computing」のキーノートでのことだ。
1万5,000人が参加した会場で彼女の言葉は、フェイスブックのシェリル・サンドバーグCOOが著書「リーン・イン」で提唱した、力強いメッセージと同じ響きでこだました。ロメッティもそのエピソードに登場するこの本は、ベストセラーになったが、一部のフェミニストからは「白人の異性愛女性が提唱するお決まりのエセフェミニズムだ」との批判も浴びていた。
しかし、イベント当日、ロメッティの言葉は聴衆から熱狂的な拍手で受け止められた。彼女は仕事を始めて間もなく、上司から昇進を提案された時のエピソードも披露した。
上司の言葉に彼女はまだ準備が不十分なことを理由に返事をためらったという。だがその翌日、出勤した彼女はその提案を受け入れることにした。
「そこから学んだのは、成長と心の安らぎは同時には得られないということです」と彼女は言う。
「誰だってどんな国でも企業でも、それは同じです。自分が成長するのはどんな時か、考えてみれば分かるでしょう。それはリスクをとって新たな物事にチャレンジする時なのです」とロメッティは語った。