––いわゆる“破壊的なイノベーション”は、日本企業にも可能なのでしょうか。
森:アメリカの企業の場合、過去のしがらみを持たない経営者を外部から招き、“歴史”を否定できるので、仕組みを作るのが速い。それだけに破壊的な変革が得意です。
ただし、日本企業が欧米のマネをしてもうまくいくとは限りません。従業員を守るという日本企業の特質を生かしながら、元々持っている優れたコアなテクノロジーから種を育て、新たな領域への転換によって成長軌道に乗せている企業もあります。
「日本人は、摺り合わせは得意だが、システムを作るのは下手」とよく言われます。しかし、コアなビジネスをイノベーティブなビジネスにつなげていくには、摺り合わせる技術が生きるはずです。
––一方で、ベンチャー企業のトップに求められる資質は何ですか。
森:ベンチャー企業のトップは、最先端のテクノロジーに強い半面、サスティナブルなビジネスの仕組み作りが得意でない人が多い。ビジネスとして成り立たせるには、トップが自らの強みと弱みを知り、自分一人では限界があることを認識していることが不可欠。誰とパートナーを組むのか。エコシステムの中で闘うための武器を揃える力が必要です。
森 俊哉◎KPMGコンサルティング 代表取締役社長兼CEO。1986年、KPMG港監査法人入所。KPMG新日本監査法人代表社員を経て、2004年、あずさ監査法人代表社員。15年に専務理事、現職。KPMGジャパンのアドバイザリー統括責任者も兼務。グローバル企業の様々な経営課題に関するアドバイザリー業務と会計監査に豊富な経験を有する。