ビジネス

2016.10.19

世界が注目の日本発「音楽スタートアップ」 Qratesの野望

photo by Sam Diephuis / gettyimages


──音楽に特化したスタートアップとして最も厳しかったことは?

福山:まず音楽業界は排他的であること。業界に溶け込み知名度を上げるには戦略が必要だ。コンテンツ・オーナーとの関係の構築には、ふさわしい人物をどれだけ知っているかによって時間のかかり方が違う。次に音楽テックの観点からみると、幸運なことにストリーミングサービスとは違って我々にはライセンシングの問題が発生しない。しかし、従来のレコードの発注・生産・発送のビジネスモデルと衝突しかねないとは考えている。出資者を探すことはどんな分野のスタートアップにとってもすでに難しい状況になっているが、音楽スタートアップにとってはより厳しいと感じる。

──メディアに取り上げられることにより、ビジネスは追い風を受けているか。

福山:大手メディアに取り上げられるたびに、我々がうまく発信できているかどうかを見ることができている。vinylize.it(サウンドクラウド上の楽曲をレコード化するプロジェクト)に関しては多数のフィードバックがあった。強調しておきたいのが、我々はアーティストの同意なしに何かを進めることはないという点だ。

──ここ1年ほどでどれぐらいビジネスは成長したか。

福山:クレイツでは世界各国のアーティストによるおよそ2,000のプロジェクトが実施された。我々の3大マーケットは売上の多い順にアメリカ、イギリス、日本だ。

我々はプロジェクト・オーナーが自らのキャンペーンを成功させられるように支援するにあたり、アーティストがクレイツでキャンペーンを始める前にvinylize.itでレコードの需要を高められるようにした。これはオンデマンドのレコード生産に関する長期的なビジョンの一環だ。

──クレイツの次の一手は。

福山:コンテンツ・オーナーと密接に連携して既存のプロダクトを改善していくこと。さらにオンデマンドのレコード生産の未来に関するビジョンを推し進め、デジタル版と同時にアナログをオンデマンドで用意できるようなツールを開発している。存在しているすべての録音のデジタル版にオンデマンドでアクセスできる世界を実現できるのであれば、レコードでも同じことができるはずだと思っている。

編集=上田裕資

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