ビジネス

2016.10.19

世界が注目の日本発「音楽スタートアップ」 Qratesの野望

photo by Sam Diephuis / gettyimages

音楽系スタートアップ企業の動向をチェックしている人なら、Qrates(クレイツ)と聞けばピンとくるだろう。クレイツはメディアの注目を浴び、英国のアビー・ロード・スタジオが設立したインキュベーション機関「アビー・ロード・レッド」にも選ばれた。

アナログレコードのプレス製造から販売まで、レコードビジネスに関わる様々な工程をワンストップで提供するのがクレイツのサービス。ファンからの事前予約を受け付けるクラウドファンディングのプラットフォームも用意。

製造は100枚から受け付け、デザインを発想するためのツールや売上をシミュレートできる機能も装備。アーティスト本人が総合的にビジネスをコントロールできる。

10月17日からサンフランシスコで開催のSFミュージック・テック・サミット(SF MusicTech Summit)でプレゼンを行う同社の未来について、同社の福山泰史CMO(最高マーケティング責任者)に話を聞いた。

──クレイツが海外のプログラムに参加することの意義は。

福山:本社が東京にあり、英国やアメリカには拠点が無いため、サービスを知ってもらうために大切なチャンスだと考えている。厳しい資金繰りのなか米英での成長を目指すスタートアップとして、限られたリソースで最大限の効果を得ようとしている。

──なぜクレイツは業界の注目を得ているのか。

福山:レコードの人気が上がってきていることはよく知られている。レコードはストリーミングとは違いすべてのミュージシャンにとって公平に利益を得られる媒体で、ファンたちにユニークな体験を提供できる。我々は音楽ビジネスの中でもクラウドファンディングやファンと直接かかわり合う分野に位置しており、オンデマンドのレコード生産のイノベーションに関するより広い視野も持っている。

──海外のコンペティションやアクセラレータープログラムへの参加で得られるものは。

福山:SFミュージック・テック・サミットへの参加は、ベイエリアのテックシーンに入り込むのに効果的な手段だ。現地に拠点を置くプラットフォームや投資家、起業家たちとダイレクトに関係を築くことを期待している。

──これまでの経験を通じて学んだことは。

福山:プログラムに選ばれたり参加したりするというニュースは音楽テックコミュニティーでは広まるが、ニュース自体が企業の成長を加速させると考えるのは甘い。プログラムに参加して結果を出すためには積極的に戦略を推し進める必要がある。

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編集=上田裕資

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