ビジネス

2016.10.17

アリババの米国進出が抱える難題 「偽ブランド品」は未だ販売中

photo by Andrew Burton / gettyimages

最近、アリババへの米国進出に関連する2つのニュースが報じられた。良いニュースはアリババの映画製作部門が、スティーブン・スピルバーグの制作会社「アンブリン・エンターテインメント」と、映画制作や中国での配給に関する包括的な契約を結んだことだ。

悪いニュースは、アリババのECサイトでの偽物取引の取り締まりが進展していないと、米国のアパレル企業が非難していることだ。アリババが運営するECサイト、タオバオ(淘宝)は偽物の流通で悪名高いが、中国では珍しい問題ではない。

バイドゥ(百度)はかつて、自社の人気サイトで楽曲の違法コピーを野放しにしていたし、今年初めには、検索結果にスポンサーリンクを混ぜ込んでいることが大スキャンダルになった。

アリババでは約2年前、中国当局の調査で、タオバオで取引されている商品の3分の2近くが偽物だと判明。大きな批判にさらされた。アリババはその後、サイトの監視を強めることを約束し、昨年後半に公表された米国通商代表部(USTR)のブラックリストへの掲載をぎりぎりで免れた。

米アパレル業界は「偽物」に大反発

このプロセスに対し猛反発しているのが米国のアパレル業界だ。米アパレル・フットウエア協会(AAFA)はこのほど、来年公表される偽物を取り扱う“悪のマーケット”リストにアリババの名前を掲載するようUSTRに求める声明を発表した。

AAFAは声明で、アリババが積極に行動していると言い続けているにもかかわらず、そのECサイトには改善が見られないと指摘、USTRに正式に行動を求めたとコメントした。一方アリババは、USTRに従っていると反論、「常にブランドや業界団体、規制当局と協調し、ECサイトの秩序維持に努力している」と述べた。

実際のところ、偽物がはびこる中国で、タオバオのようなECサイトを監視するのはほとんど不可能だ。偽物を売ったことでアリババに店舗を閉鎖されても、新たな店を簡単にオープンできるため、いたちごっこが続く。アリババのライバル JD.com(京東商城)も昨年、同じ問題でC2Cサイトを閉鎖した。

アリババには、莫大な収益を生むタオバオを閉鎖する選択肢はない。だが、そのサイトから偽物を追放するには、多額の支出を強いられるだろう。

良いニュースを見てみよう。「アリババ・ピクチャーズ)とスピルバーグの「アンブリン・エンターテインメント」は、映画の共同制作と共同出資、中国での上映で協業すると発表した。

映画の興行成績が10年内に世界最大になると見込まれる中国は最近、ハリウッドと急接近している。中国最大の映画館チェーン「ワンダグループ」もハリウッドスタジオの“ビッグ6”であるソニーピクチャーズと提携した。

アリババは「ミッションインポッシブル」「スター・トレック」「ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズ」等の映画作品に出資してきたが、今回の協業の範囲はより戦略的で広い。今後も、似たような事例が増えるだろう。

編集=上田裕資

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