ウェブはニューヨークのトップサロンでキャリアを積んだ後にカリフォルニアに移住。専業主婦を経て、2010年までは出張ヘアスタイリストとして顧客の家々を回っていた。
「1日に数時間、子育てから解放されたくてやっていたようなもの。多少は家計の足しになればという程度だった」と、ウェブは当時を振り返る。ところが1回40ドルのブローは本人の予想以上に評判を呼び、クライアントが激増。一人でさばき切れなくなったウェブは、兄が出資した250,000ドル(約2,500万円)と夫婦の預金を元手にサロンを開店した。
「私の祖母の世代の女性は、週に一度サロンに行ってセットしてもらい、自宅では髪に触らなかった。今はなくなってしまったその習慣を現代風にアレンジしたのがDrybarだと言えます」とウェブは言う。ウェブによると、美容師の多くはカットやカラーに比べて単価の低いブローに時間をかけることを非効率的だと考えがちだ。しかしウェブはニューヨークのサロンで働いていた頃から、ブローで顧客を美しく見せるプロセスに一番のやりがいを感じていた。
45分45ドルで全米に急拡大
Drybarはファミリービジネスとしてスタートした。ヤフーのマーケティング職に就いていた兄のマイケル・ランドーが初代CEOを務め、広告業界出身の夫キャメロン・ウェブが店舗やオリジナルヘアケア用品のデザインを担当。イメージカラーには、女性向けサービスで多用されるピンクなどは使わず、イエローとグレーを基調とした。
Drybarが8店舗目を迎える頃、ウェブは家族経営の限界に気づいたという。そこで株式を発行して投資者を募り、ボストンに拠点を置くCastanea Partnersから2012年に1,600万ドル(約16億円)、2014年に2,000万ドル(約20億円)を調達した。また、新CEOにネイル大手OPIの元社長ジョン・ヘフナー、リテール部門のトップに元アップルのデニエル・ブルーノを迎えるなど、人事も一新した。
「事業を拡大する上で、私たちには助けが必要だった。私には起業家としてのビジョンはありますが、次々に新店舗を出し、何千人もの従業員を雇い、無数の顧客と向き合う業務を同時にこなすことは不可能です」