ビジネス

2016.10.27 15:00

「静脈産業」パイオニア、会宝産業の挑戦


さらにBoP3.0として、こうした市場に他社が積極的に参入できるようなプラットフォームを創造している。まず、誰もが中古部品の品質を把握できるようにする「JRS(Japan Reuse Standard)」という仕組みを構築した上で、誰もが参加可能な「中古部品オークション」を設立している。

「JRS」とは会宝産業独自の品質表示規格で、例えばエンジンであれば内部のオイル汚れや年式、始動状態などを5段階で評価し、タグをつけて表示をしている。これにより、目利きがなくても中古部品の品質が分かるため、経験値や交渉力が無いバイヤーや最終顧客が品質の悪い部品を高く買わされるといった状況を防げるのだ。

「中古部品オークション」とは、数千の中古部品業者が集まる世界最大の物流拠点、UAE・シャルジャに設立されたオンライン入札の部品オークションのこと。従来、自動車部品は品質による価格差がつきにくい状況であったが、オークションで「JRS」の評価を基準に入札が行われることで、高品質なエンジンには高値が付くなど取引の透明性が改善されている。
 
こうして中古部品の調達、販売の双方において誰もが参加できる仕組みを構築するとともに、品質表示規格を導入することで、会宝産業は市場自体を拡大させ、透明性、安全性の改善を行っているのである。

さらに、こうした市場に日本の中小企業が参入する障壁を下げるために、国内の競合他社をアライアンス先企業と捉え、バイヤーの紹介やコンテナ積込管理、貿易書類作成、資金回収などの業務を代行する商社機能を備えることでネットワークの強化に努めている。

【BoP3.0としての会宝産業のビジネスモデル】

BoP3.0においては、会宝産業を中心として多様なステークホルダーが参画するようになったことがわかる

もちろん、販売代行をする場合には個別バイヤーとの取引だけではなく、先述した中古部品オークションを通じた販売も行われる。これらの取組を核としたネットワークの構築により、国内の車輛調達基盤を拡大し、海外需要の高まりに対応できる体制を整え、結果として中小企業一社では難しい途上国の急成長にあわせた継続的な成長を実現している

会宝産業は、こうしたプラットフォームの創造・活用により、透明性の低い市場における透明性の向上を実現し、中古部品の利用者である新興国・途上国のMoP層、BoP層、バイヤー、日本の中小企業等の全てのステークホルダーが安心して中古部品市場に関われるようになる仕組みを作り、それを自社の継続的な成長につなげていっているのである。

次回も、BoP3.0ビジネスの事例を紹介する。

文=平本督太郎

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