ビジネス

2016.10.27

「静脈産業」パイオニア、会宝産業の挑戦

アフリカで現地技術者育成を行う会宝産業山口執行役員

前回紹介したBoPビジネス3.0は、世界においても事例数が限られており、これからその増加が望まれるビジネスモデルである。

しかし、すでに日本企業でもその萌芽事例ともいえるビジネスを展開している企業がある。そのうちの一社が、金沢に本社を構える会宝産業だ。

会宝産業は、日本を代表する自動車リサイクル企業。テレビ東京のカンブリア宮殿で、インタビュアーの村上龍氏が「会宝産業こそ真のグローバル企業」と称したように、その活動は国内に留まらず、海外に広く展開されている。

ものを製造する「動脈産業」の対義語として、作ったものを循環させることを「静脈産業」という。会宝産業はその静脈産業のパイオニアとして、使用済自動車を正しく解体し、資源として活用することに取り組んでいる。

日本において中古車、廃車を高額で買取り、それをリサイクルする際に中古部品を取り出し、その中古部品を輸出する--。海外に自動車リサイクルネットワークを構築することで世界74か国への販売を実現しており、売上に占める輸出の割合は75%を超えている。

会宝産業の自動車リサイクル事業は、廃棄物処理という観点から世界で共通して必要とされる環境ビジネスである。今回はそれをBoPビジネスの視点で紐解いていく。

リサイクルビジネスは近頃、循環型経済のいちカテゴリーとして再び注目を浴びている。アクセンチュアの推計によれば、2030年までに世界の中古品に関する市場は約108兆円、リサイクルに関連する市場は約156兆円にもなるとされている。

こうした成長市場において、会宝産業は、自動車の廃車解体を通じて素材のリサイクル・中古部品の輸出を行う。中古部品の販売先には、最終的にBoP層の修理業者等が含まれるため、BoP1.0のビジネスとして捉えることができる。

また会宝産業はここに留まることなく、リサイクルの仕組みやそれを成り立たせている法制度までをナイジェリアやブラジルに輸出している。それが、現地のインフォーマルセクターで廃車から中古部品を違法に回収・販売しているBoP層を育成していくことにもなり、その市場拡大・共創の活動はBoP2.0のビジネスとして捉えることができる。

【BoP2.0としての会宝産業のビジネスモデル】
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文=平本督太郎

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