アップルが買収狙う「謎の電動バイク企業」リット・モーターズの苦境

リットのC-1 (Lit Mortors)


経営破たん説も

「とてもガッカリしている。私は最初に予約をした顧客の一人で、手付金も支払った。1年が経ち、リットからは今年こそC1の出荷が始まると言われていたのに。製品コンセプト自体が実現不可能なのかもしれない」

出荷が延期された要因の一つは、キムが試験走行中に事故に遭い、2015年の大半を車椅子で過ごすことになったことだ。関係者によると、この事故の直後からリットは休止状態に陥り、従業員の大半が解雇されたという。

リットの現在の経営状況は不明だ。ソーシャルメディア上の投稿によると、サンフランシスコの中心部にあった本社からは退去し、郊外の倉庫に古いプロトタイプを保管しているという。同社は今後もC-1を市場に投入することに全力を尽くすとしており、製造開始日を検討しているようだ。リットのホームページには、キムを除き5人の社員の顔写真が掲載されている。

リットは様々な問題を抱えてはいるが、ジャイロスコープを使って車体を自律させる技術や、バイクのような車体デザイン、衝突防止技術などに関する国際特許を保有している。アップルはリットの知的財産やエンジニアリングの知見に関心を寄せているのかもしれない。しかし、実際にアップルがリットを買収するかは不透明だ。

アップルは自動車開発プロジェクトの本格再稼働を目指し、シリコンバレー以外の企業にも触手を伸ばしている。フィナンシャル・タイムズは9月にアップルがマクラーレンと買収交渉を行っていると報じたが、マクラーレン側は「アップルとはいかなる出資の可能性に関しても協議していない」と報道内容を否定している。

編集=上田裕資

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