アップルが買収狙う「謎の電動バイク企業」リット・モーターズの苦境

リットのC-1 (Lit Mortors)

アップルは、停滞する自動車開発プロジェクトを再び軌道に乗せるため、外部の自動車メーカーへの出資を検討している。最近ではイギリスの高級車メーカー「マクラーレン」への出資が取り沙汰されたが、この他にも電動バイクの開発を手掛けるサンフランシスコのスタートアップ「リット・モーターズ(Lit Motors)」とここ数か月で何度か面談をしている。

情報筋によると、アップルはリットのダニエル・キムCEOに対して買収提案を行ったという。アップルは毎年、様々な分野で数多くの企業への出資を検討している。以前、ニューヨーク・タイムズは、アップルが自動車開発プロジェクト「タイタン」に関わる社員を数十人解雇したと報じたが、タイタンを挽回させるためには外部企業との提携が不可欠だと判断したようだ。

タイタンプロジェクトの目的は、ウーバーやテスラモーターズ、アルファベットなどと対抗して自動運転車を開発することだが、リットが掲げるビジョンは大きく異なる。ロードアイランド州の美術大学、ロードアイランド・スクール・オブ・デザイン出身のキムは、小型で効率的な乗り物の開発を目指して2010年にリットを創業した。同社が開発した自律走行型の電動バイク「C-1」は、2012年にサンフランシスコで開催されたスタートアップのカンファレンスでキム自身がデモ走行を行い、大きな話題を呼んだ。

「C-1は、車の持つ安全性や快適性と、バイクならではの冒険性や効率性を兼ね備えた乗り物だ」とキムは2012年10月にフォーブスのインタビューに答えている。

しかし、キムの壮大なビジョンに共感する投資家は少なく、数年間で集まった資金は500万ドル(約5億円)に過ぎなかった。キムは家族や友人からの支援を受けて開発を続けた結果、2014年3月にジンガの創業者、マーク・ピンカスや韓国のビリオネアであるキム・ジョンジュ、プロサーファーのケリー・スレーターなどから合計100万ドルの出資を得た。その後、アルファベットのCEOであるラリー・ペイジもリットに出資したが、金額は公開されていない。アルファベットの広報担当者に、ペイジのリットへの関与について質問をしたがコメントは得られていない。
次ページ > 製品はいまだ未完成

編集=上田裕資

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事