ノースカロライナ大学のオザワ・サチ博士のほか各大学、非営利団体、米製薬大手メルク・アンド・カンパニーの研究者たちからなる研究チームは、全米規模のさまざまなデータベースを基に経済モデルを開発。医療費と生産性の損失について評価を行った。対象とした感染症は、以下の通りだ。
A型肝炎、B型肝炎、帯状疱疹、インフルエンザ、麻疹(はしか)、流行性耳下腺炎(おたふく風邪)、風疹、破傷風、ジフテリア、百日咳、水痘、髄膜炎、肺炎球菌疾患、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染
研究の結果、最大の損失をもたらしたのはインフルエンザ(57億9,000万ドル)だったことが確認された。次いで肺炎球菌疾患(18億6,000万ドル)、帯状疱疹(7億8,200万ドル)となった。論文の主著者であるオザワ博士は、「これらの結果は、診察料や薬代、入院費用などの支払いの回避につながるワクチン接種の価値を強調するものだ」と説明している。
一方、米疾病対策センター(CDC)の調査でも、成人(19歳以上)のワクチン接種率が未成年者を大きく下回っていることが明らかになっている。2014年にTdap(破傷風・ジフテリア・百日咳)ワクチンを接種したのは成人の20.1%、インフルエンザとA型肝炎、B型肝炎の接種率はそれぞれ、43.2%、9.0%、24.5%だった。肺炎球菌の感染の危険性が高いとされる19~64歳の人たちの間でも、肺炎球菌ワクチンを受けた人は20.3%にとどまっている。
これに対し、はしかとおたふく風邪、風疹の新3種混合(MMR)ワクチン、ポリオ、B型肝炎、水痘のワクチンを摂取している未成年の割合は90%を超えている。恐らく大人たちは、この点においては子どもたちを見習うべきだろう。