「最後の大市場」アフリカへ投資をすすめる理由

第6回アフリカ開発会議に出席した安倍晋三首相(photo by Anadolu Agency / gettyimages)


世界銀行グループの目的は、「貧困の撲滅」と「繁栄の共有」。MIGAは、インフラなどの大型案件が多いのですが、開発効果の高い投資なら、どんなに小さな案件であっても支援することを戦略のひとつとしていて、最低投資単位を設定していません。

MIGAで提供しているのは、“政治リスク保険”と“信用保証”のふたつです。政治リスク保険では4種類のリスクをカバーしています。1)海外送金と兌換、2)政府が契約を守らなかったときのための契約不履行、3)適切な価格を払うから、資産等を置いて出ていってほしい、といった国営化・収用、4)戦争や内乱等からのビジネスや資産への損害。以上の4つです。

信用保証は、開発途上国のうち、中所得国の債務を保証することで、資金調達コストの低減を支援しています。

MIGAが、アフリカで政治リスク保険を付けさせていただいた日本企業の事例では、日立建機のザンビア進出があります。元々南アフリカに鉱山のメンテナンス工場をお持ちでしたが、メンテナンス向上には鉱山の近くにあった方がよいということで、ザンビアに工場を新設し、現地雇用もされています。

アフリカの魅力は、やはり経済成長率です。一方、アフリカは若年層が多く、中間所得層の増加も見込まれます。加えてインフラも拡充が必要で、アフリカ全体でみると、十分な電力が供給されている世帯はまだ1/3ほどです。まだまだ投資余地が大きいのです。

インフラ以外にも、たとえば、ザンビアでは魚のティラピアを中国からの輸入に頼っていましたが、その現地供給のため、養殖場に投資する企業があり、MIGAが支援をしています。そのザンビアの養殖場では、日本の養殖技術は大変優れていると評価されています。そのため、日本企業もこうした分野への進出余地があると思われます。

また、TICAD開催地となったケニアでは、地熱発電がさかんです。民間企業が運営するオカリナという発電所をMIGAで支援していますが、現地へ行ってみて驚いたのは、送電線に沿ってバラを栽培するビニールハウスが建てられていたことです。

アフリカでは盗電などの問題があり、地域住民とのコミュニケーションが重要なのですが、ビニールハウスが発電所を守る要塞となり、雇用だけではなく、新たな産業も創造していました。そのバラは、オランダや、日本に輸出されています。

私が長官に就任した13年以降も、MIGAはサブサハラ・アフリカ地域を最優先支援対象として開発・支援に力を入れてきました。16年度には125億ドルをコミットメントしました。また、世銀グループは女性の活用にも積極的です。MIGA出身で、現在世銀で活躍する日本人女性の三宅麻比子は、貿易競争力グローバルプラクティスの西アフリカ責任者としてコートジボワールに赴任し、活躍しています。

TICAD初のアフリカ開催となった今年、日本企業の皆様にも、世界でも成長余力の大きな地域であるアフリカへの民間投資にもっと積極的に取り組んでいただきたいです。

ほんだ・けいこ◎熊本県生まれ。リーマン・ブラザーズなどに勤務後、マッキンゼーで、金融機関などを対象に企業戦略等のコンサルティングに24年間従事。同社にて、アジアで初の女性シニア・パートナーに就任。13年から現職。

構成=吉田彩乃

この記事は 「Forbes JAPAN No.27 2016年10月号(2016/08/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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