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2016.10.12 12:00

ラトビア発「仮想通貨」が越える国境、つなぐ消費

PINSのガビ・クールCEO (photograph by Irwin Wong)


顧客にとって価値のあるデータ活用が会員拡大の秘訣
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なぜ、PINSは北欧で成功できたのか?

国営航空会社のブランド力や、大手小売業との連携が背景にあるのは間違いない。だが、PINSにはもう一つのユニークな強みがある。ビッグデータの活用方法だ。

どのような顧客が、いつ、どこで、何を買ったのか? 彼らの消費行動から何を読み取ることができ、どんな販促策が考えられるのか? ロイヤルティ・プログラムはすでに企業の販促シーンで多く活用されている。
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こうした使い方に加えてPINSは、幅広い業種から集めた豊富なデータを読み解き、パートナー企業間の垣根を超えた販促策を提供してきた。ガビ・クールは言う。

「顧客は個人情報の価値に気づいており、データの使われ方が気に入らなければ、自分のデータをコントロールするようになる。顧客にとって意味のある、価値のある情報を提供できなければ、“スタメン”から外されるのです」

PINSは現在、さらなる可能性を求めて、北欧の最大手メディアグループMTGと提携。メディアと消費を結びつける取り組みを始めている。

MTGのバイバ・ズゼナCEOは「当社はテレビを通して多くの人にリーチできる。今後はPINSの大量の顧客データを活用し、ターゲットを絞り込んだカスタムメイドのサービスを提供していきたい」と話す。テレビ番組や広告だけでなく、オンラインのコンテンツやサービスにも活かす考えだ。

ドラマで日本の魅力を発信 世界の消費を日本に呼び込む

北欧で手応えを得たPINSが次に目指すのは、アジア市場だ。すでに日本やインドネシアで実験を始めている。


「PINS」は、バルト3国やフィンランド、ロシアで急速にユーザーを獲得してきた。今期は日本とインドネシアでジョイントベンチャーを設立。シンガポールや中国などを含めたアジアに加え、中東、北アフリカへの進出も準備中だ

PINSは、東京MX、アジアビジネスサポートと、アジア事業に関するジョイントベンチャーを設立。仮想通貨のプラットフォームを開発する。

東京MXらが日本を舞台にしたドラマを制作して、インドネシアで放映し、ドラマに登場するモノや、ロケ地ツアーといった旅行を商品化して消費につなげる。その際、PINSのポイントを使ったり貯めたりできるようにし、そこで集めたビッグデータも商品開発に活用していく。17年末までにアジアのPINSユーザーを1,000万人まで増やすのが目標だ。

実際、東北地方出身の日本人男性とインドネシア人女性を主人公にした恋愛ドラマを放映したところ、インドネシア国内での日本の好感度が上がり、“東京以外の日本”への関心も高まったという。

放送行政を担当する総務省の南俊行情報流通行政局長は言う。「アジア諸国で多彩な日本のコンテンツを流すことで、日本の芸術、文化の良さを知っていただく機会にできたらいい」

政府は外国人観光客の誘致に放送コンテンツの輸出が有効だと考えており、18年に、放送コンテンツの海外輸出で200億円を目指している。インドネシアで貯めたポイントで来日し、ロケ地巡りを楽しむ─コンテンツと消費との橋渡し役となる、PINSのようなプラットフォームにも期待を寄せる。

PINSは“仮想通貨”を通して、国や、さまざまな企業、コミュニティ、文化を橋渡しする役割を担うことになる。航空、小売り、メディア、金融、スポーツ、旅行─提携先の可能性はまだまだ広がる。さらにはEUで検討される個人情報の取引を見据え「情報銀行」のイニシアティブも狙う。ガビ・クールは言う。

「ビッグデータが“人間”を表すものだと考えれば、データ活用の可能性は無限大です」
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文=Foster Martin、大木戸歩

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