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2016.10.12 12:00

ラトビア発「仮想通貨」が越える国境、つなぐ消費

PINSのガビ・クールCEO (photograph by Irwin Wong)

北欧を中心に急速にユーザー数を増やしている仮想通貨「PINS(ピンズ)」。今秋、ついに日本に上陸。PINSが描く、アジア戦略をガビ・クールCEOに聞いた。

トルコ共和国で、首都イスタンブールとイズミルを結ぶ高速道路の建設が進んでいる。ここで今秋、ユニークな実験が始まる。

ポイントプログラムと保険サービスを組み合わせた「スマートハイウェイ」の取り組みだ。モバイルアプリで地図や音楽を提供するのに加え、速度制限を守り、安全運転で走行したドライバーにポイントを付与する仕組み。貯めたポイントは、買い物や食事で利用できる。

安全運転や日々の健康的な活動に対して保険会社がインセンティブを出す仕組みは、南アフリカ共和国やイタリアでも導入されている。両国では自動車事故を3割程度削減できるなど成果が出始めた。トルコ高速道路公団のアルプ・グルジルCEOは「交通事故の削減につなげたい」と期待を寄せる。

このトルコでのプロジェクトのカギを握るのが、サービスのハブとなる仮想通貨「PINS」だ。

PINSはラトビアの国営航空会社バルティック航空のマイレージサービスとしてスタートした。同社を率いるガビ・クールCEOは、航空、小売り、金融業界などでロイヤルティ・マーケティングや経営の経験を積み、KLMオランダ航空のマイレージ・プログラムを開発。AIMIA社では北京オリンピックでのマーケティング・プロジェクトを担当した。

この時の発想は、今日の「共通ポイント」に生きている。そして今、当時の弟子たちが世界各地で共通ポイントを開発する。

2012年には、当時、顧客の囲い込みの手段でしかなかったポイントサービスのオープンプラットフォーム化を実現すべく、ラトビアの国営航空会社バルティック航空に移る。そこで立ち上げたのがPINSだ。ただ、バルティック航空の場合、それまでのプロジェクトとは環境が違った。ガビ・クールは振り返る。

「航空会社単独でプログラムを運用するには、バルティック航空の規模は小さすぎました」

そこで考えたのが、ロイヤルティ・プログラムをレストランや買い物といった日常の消費シーンでも使えるようにすることだ。

「小売業のサービスと航空会社のプログラムを融合したら、双方の顧客にとって魅力的なサービスができると考えたのです」

小売業と連携すれば、会員層は広がる。航空会社のハイエンドな顧客層に加え、スーパーマーケットで日々の買い物をする幅広い消費者を取り込めるようになるからだ。ただ、こうした取り組みは世界でも例がない。ノウハウの獲得には、実証実験が必要だった。

ガビ・クールは14年、フィンランドの大手小売業に声をかけ、試験運用を始めた。“仮想通貨”として流通を始めたPINSの知名度は、これにより一気に高まり、ポイントプログラムとしてのブランドを確立することに成功する。ガビ・クールは胸を張る。

「14年、フィンランド国内でのグーグルの検索ワードの1位は『PINS』でした。なんと、アップルの『iPhone6』より多かったのです」
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文=Foster Martin、大木戸歩

この記事は 「Forbes JAPAN No.28 2016年11月号(2016/09/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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