新興国生まれの医療機器が日本の医療費を削減する?[医療トリビアpart.7]

JGI/Jamie Grill / gettyimages


中島教授が現在、リバース・イノベーションとして具体的に開発を進めているのは、「持ち運べる手術室」というコンセプトの内視鏡手術機器。既存のコンパクトビデオカメラに内視鏡と電気メス、腹腔内に手動でガスを送る小型装置、バッテリー式のLED光源を組み合わせたものだ。現在、全インド医科大学(AIIMS)の医師とともにフィールドワークを実施しており、5年以内の実用化を目指している。日印両国の首脳も支援を表明。今後は内視鏡以外にも、安価で使いやすい医療機器開発を検討する計画だ。
 
長年「ものづくり大国」を自負してきた日本だが、実は医療機器に関しては後進国だ。年間の貿易赤字額は7,000億円近くに上り、現場で使われる機器のほとんどは欧米メーカーのものだ。

「唯一、胃カメラをはじめとする内視鏡はオリンパスや富士フイルムが世界シェアの大部分を握っていますが、それも今後はどうなるか」と中島教授は懸念する。もしグーグルやアップルが、ネットに繋がった、ソフトウェアが自動更新される、性能の優れた低価格の内視鏡を作り始めたら…。あっという間にシェアを奪われることは目に見えている。

「低コストで適正な性能を持つ医療機器の開発は、高騰する医療費の削減にも寄与します。国をあげてこの分野に挑戦することが、医療だけでなく日本社会全体に貢献することは間違いないのです」(同)

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文=大越裕

この記事は 「Forbes JAPAN No.27 2016年10月号(2016/08/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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