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杉本真樹医師


患者の命を預かる手術室は、“聖域”だ。外科医である杉本医師にとっても、その点に異論はない。だが、ある日、杉本医師は疑問を抱く。手術室の排他的な聖域意識が新たなテクノロジーに拒否反応を示し、革新を阻んでいるのではないかー。

“聖域”にいる外科医は目の前の患者を治すことで精一杯で、医療全体に影響を及ぼす新技術の開発まで気を回せる状況にない。それだけにテクノロジーに対する医師たちの反応は鈍い。「これでは多くの患者を治すことのできるテクノロジーがあったとしても、医師はいつまでもそれを活用できない。私はその矛盾に満ちた聖域意識を解放し、“効率化”をはかるべきと考えました」

杉本医師が3D-CT画像の有用性に医療業界でいち早く着目し始めたのは2000年代初頭。3D-CT画像が出回り始めた、いわば黎明期だった。

杉本医師は当時、地域医療の現場にいた。最新機器の導入が進まず、医師や医療従事者が疲弊しているという、医療格差を実感していた。手術現場のニーズと一致した3D-CT画像を作るべく、杉本医師は放射線医に相談を進めた。

しかし話は簡単には進まない。医師には、それぞれの専門領域があり、領域が明確に区別されている。CTのような患者の画像診断情報を扱うのは放射線科の放射線科医。患者の手術を行うのは外科の臨床医といった具合だ。また、前例がないことには消極的になりがち。

そこで、杉本医師は人間関係を構築すべく、放射線科に足繁く通った。飲み会にもマメに参加し、忘年会では一緒に踊った。少しずつ放射線科医と実務作業を行う放射線技師たちと関係を築き、手術で本当に役立つ3D-CT画像を診療科や業種を超えて集めては学会で発表した。

「ただ流行りのテクノロジーを医療に持ち込んだわけではない」と杉本医師は強調する。「外科医として、技術がどれだけ多くの人の役に立つかを考えている。『VRを使うこと』がすごいのではなく、『VRが実際に手術の役に立ち、人々を救っていること』のすごさを知らせたい。その前例を作りたいと考えています」

文=森旭彦

 

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