地元のファンを増やす「現代版・参覲交代」[小山薫堂の妄想浪費 Vol.15]

色彩あざやかな花がつくりだす美しい風景。ここに「世界で最も贅沢な書斎兼小さな図書館」を建てたい。(illustration by Yusuke Saito)


もうひとつ、いつか個人的に実現したいプランがある。数年前、那覇で食事をしていたときのこと。隣り合わせたお医者さんのご夫婦が、ドラマ『北の国から』の舞台として知られる北海道・美瑛(びえい)からはるばる来られていた。「遊びにきてください」というお言葉に甘えて数カ月後に訪ねてみると、ご自宅が通称“パッチワークの丘”の上にあり、その風景は言葉にならない美しさだった。感激していたら、ご夫婦が「そんなに気に入ったのなら、うち広いので、よかったら家を建ててください」とおっしゃるではないか(これは冗談でなく、実際に土地の造成までしてくださった)。

そこで「地産地消」ならぬ「地書地読(ちしょちどく)」というのを思いついた。書斎をつくり、書いたものを敢えて外に持ち出さずに、「ここまで足を運ばなければ読めない」というルールにするのだ。コンセプトは「世界で最も贅沢な書斎兼世界で最も小さな図書館」。美瑛の美しい風景を前に、美瑛で書かれた文章を読む。それであれば僕の下手な文章でも少しは素敵に感じてもらえるのではないだろうか……などと夢想している。

*第1旅客ターミナル2階南北出発チェックインロビー上部に全11作品を展示。2017年3月31日まで開催予定。

小山薫堂◎1964年、熊本県生まれ。放送作家・脚本家として『世界遺産』『料理の鉄人』『おくりびと』などを手がける。エッセイ、作詞などの執筆活動の他、京都市や熊本県など地方創生の企画にも携わっている。

イラストレーション=サイトウユウスケ

この記事は 「Forbes JAPAN No.27 2016年10月号(2016/08/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

タグ:

連載

小山薫堂の妄想浪費

ForbesBrandVoice

人気記事