テクノロジー

2016.10.21 08:30

テレビ電話での遠隔地診で小児救急を8割減らせるか?[医療トリビアpart.5]

遠隔医療相談は、小児科などで需要が見込まれている。(写真=Mediplat)

長寿を誇る日本だが、一方で3分診療、介護難民、破綻寸前の医療財政など課題は山積み。誰もが長い人生を健康で送るために、進行中のプロジェクトを紹介する。Part.5は、遠隔医療相談の話。


例えば夜中に子供が高熱を出したとする。発熱はよくあることだが、今日はいつもよりも熱が高い。ぐったりしているのも不安だ。いますぐ救急病院に駆け込むべきか、朝まで様子を見るかー。そんな時に、テレビ電話を通して医師からアドバイスを受けられたら、どれだけ安心できることか。

Mediplat(メディプラット)が運営する遠隔医療相談「first call(ファーストコール)」は、そんな消費者のニーズをとらえたサービス。今年2月にサービスを始めた。林光洋社長は、「小児科の救急受診の8割は、急を要しないとも言われています。でも、子供の病気は判断が難しいから親は不安なのですよね」と話す。

first callは、医師と患者をネットでつなぎ、医療相談を提供するサービスだ。テレビ電話やテキストでのやり取りを通して、直接医師に相談できる。特に、小児科や精神科でのニーズを見込んでいる。

first callがメインで提供するのは、あくまで「医療相談」だ。診断はしないし、薬の処方も行わない。医師法では診療のどこかの段階で必ず対面での診療が必要だという規定があるため、診察や診断などを全てオンライン上で完結させるのは難しいためだ。

患者側でも、ちょっとした悩みを気軽に医師に相談できる「医療相談」の満足度が非常に高いことが、初期に行った実証実験でわかっている。

課題は料金設定と医師の確保にある。通常、同社のサービスの利用料は15分で1,980円(当面はモニター期間として500円で提供)。それに対して、医師の時給は一般に1万円程度と高い。このギャップをどう埋めるかが鍵となる。

「月額会員課金制にしてユーザー数を増やし、少数の医師で効率的に対応できるエコシステムをつくりたいですね」(林社長)

今後はBtoBでの展開を見据え、提携企業の獲得に注力する方針だ。
 
一方、医師の確保については、今年5月、10万人以上の医師(国内医師の3人に1人)が参加する医師専用コミュニティーサイトを運営するメドピアの傘下に入った。

「新しいことに挑戦したいという意欲のある医師や、産休・育休中の医師が参加しています」(同)
 
15年8月、厚生労働省は新たな通達で、「遠隔診療」についてより積極的に姿勢を示した。現在、遠隔診療にはスタートアップの参入が相次いでいる。

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文=大越裕

この記事は 「Forbes JAPAN No.27 2016年10月号(2016/08/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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