そもそもこのプロジェクトには、早期診断法を確立することで医療費負担の低減に貢献するという目標があった。現在、がん診断の主流である腫瘍マーカーは、がんの進行と共に増えるタンパク質などを特定する手法で、がんがある程度進行しないと見つけられないという弱点がある。
「このままでは日本の医療費は2025年に年間56兆円まで膨らむとも試算されています。ステージ0〜1で発見し、先手を打つことができれば、予防治療で医療費を増やさないで済みます」(同)
プロジェクトには、東レや東芝など4法人も参加し、検査機器の開発を担っている。また国立長寿医療研究センターは、独自の血清バンクを解析し、脳腫瘍やアルツハイマーの発症に関わるマイクロRNAを突き止めようとしている。
「認知症の4,000例以上を検証すれば、アルツハイマー型認知症の早期発見に繋がるマイクロRNAを見つけることも可能です」(同)
マイクロRNAとがんやアルツハイマーの相関関係が解明されれば、診断だけでなく、医薬品開発の効率を上げることにもつながるだろう。さらに、痛みや老化などとの関係性もわかれば、緩和ケアやアンチエイジングの分野でも、新たな地平が見えてくるはずだ。
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