トランプのこの挙動は、2000年の米大統領選で人々の記憶に焼き付けられたアル・ゴアの行動と似ている。ゴアは当時の討論会で、聴衆に語り掛けるジョージ・W・ブッシュのそばに、脅迫的ともとれる態度で接近。だがブッシュは話を一瞬止めて、ゴアに向けて笑顔で軽くうなずいて見せ、聴衆からの笑いを誘った。
この「パーソナルスペース侵害」行為は当時、メディアで大きな話題となり、ゴアの支持率低下へとつながった。この討論会は奇遇にも、9日の討論会と同じタウンホール形式(候補者が一般市民の質問に答える形式)で、会場も同じセントルイスのワシントン大学だった。
だが、注目を集めたトランプの行動はこれだけではなかった。トランプはステージ上をまるで獲物を探す獣のように徘徊し、ステージ上の市民代表やその他の聴衆に向かって自身のメッセージを声高に主張した。その内容はクリントンに対する批判であり、このメッセージは彼の身振りにも表れていた。
ステージ上の無党派層市民から質問を受けたトランプは、劇的な口調で、聴衆に向けて返答した。一方のクリントンは、返答のほとんどを質問者に向けて語った。
クリントンは、夫のビル・クリントン元大統領が1992年の大統領選で選挙運動責任者のジェームス・カービルから受けたアドバイスを実践したようだ。カービルは回顧録の中で、ビルに対し、質問に答える際にはスツールから離れて質問者に近づいてコンタクトを取るよう言い聞かせたと回想している。
歴史は繰り返すと言うが、ドナルド・トランプは果たして、アル・ゴアの二の舞を踏んでしまうのだろうか?