ビジネス

2016.10.13

激化する米国「私大サバイバル」、危機を脱した3大学が取った手段とは

ドリュー大学のベニンガー学長。元大学教授で、大学審査機関の所長を経て学長に就任した彼女は、外部からの人材を招聘し、教育と経営の両面でドリュー大学を立て直そうとした。(Photo by Matthew Furman)


そんなシルバーにとって、ブライアン・マーフィーCFO(最高財務責任者)の就任は重要だった。会計士でもある彼は、サバンナ芸術大学を一流の美大に育て上げた功労者の一人だ。もう一人は、副学長兼入学担当学生部長のフン・ブイ。彼はカーネギーメロン大学でMBAを取得した後、ファンド・マネジャーを経て、コルビー大学の入試担当事務局の責任者を務めた。

マーフィーCFOは、直ちに新たな会計システムを導入し、会計を担当していた大手監査法人KPMGとの契約を解除した。

「私は以前、KPMGのシニア・マネジャーでしたが、小さな大学が大手監査法人を雇う必要などありません」と、マーフィーは語る。彼は運用成績が悪いことを理由に、基金マネジャーも解雇した。

ブイは、高校への大学案内を33%増やし、独自の新しい出願方法を紹介している。これは、成績表や標準的なテストの点数の代わりに、出願のやり方を志願者に完全に任せるものである。

「実際には、このようなタイプの教育に魅力を感じる生徒はたくさんいます。例えば、中国など教育制度が柔軟性に欠ける国では、うちのような教育が望まれているのです」

ベニントンは、すでに危機的状況は脱している。前年は690万ドルの赤字だったが、15年6月期には220万ドルの営業黒字を計上した。15年の入学者は203人まで増え、今年は出願者数が14%増加している。海外出身の学生は約13%だが、今後ますます増えるだろう。

ブイは、9月に中国を回る予定だ。そこには、北京での「高等教育における革新と創造の重要性」と題するシンポジウムも含まれる。スタンフォード大学とジョンズ・ホプキンス大学も参加するので、地元の高校生と親で会場はいっぱいになるだろう。もちろん、シルバー学長が基調講演を行う。

シルバー学長は改革に本気である。だが、彼女に学ぶ必要があるのは中国人ではないはずだ。

大学教育の投資効果

教育こそ、最も大事な未来への“投資”。学生も保護者も進学先の状況は気になるものだ。
 
そこで、米教育シンクタンク「大学入学生産研究所」の協力のもと、「最も投資効果の高いアメリカ大学」を選定した。順位は、教育の質(35%)+中途退学リスク(15%)+所要卒業期間(15%)+卒業生の給与(25%)+卒業生の職務スキル(10%)/学費から算出している。ここでは、上位5校をご紹介しよう。

1位: カリフォルニア大学バークレー校
2位:ブリガムヤング大学
3位:フロリダ大学
4位: カリフォルニア大学サンディエゴ校
5位: カリフォルニア大学アーバイン校

西海岸にあるSTEM教育(科学・テクノロジー・工学・数学)プログラムが充実している大学が多く入っている点が特徴的だ。

文=マット・シフリン

この記事は 「Forbes JAPAN No.27 2016年10月号(2016/08/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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