「虫歯には絶対にさせません」
帝国ホテルプラザにある「クリニークデュボワ」の中原悦夫院長の考えは、一般的な歯科医の概念とは異なる。
「先日みえた患者さんは26年ぶりの受診でした。27年前に1年間かけて治療した方です。虫歯ではなく、当時入れた歯の調整のための来院でした」
中原のクリニックで虫歯の再発率が極めて低いのは、一般的な歯科が「治す技術」を磨いてきたのに対して、「守る技術」、つまり病気にならない先制医療を極めてきたから。「生まれ持った歯を生涯保ち続ける」ために、虫歯や歯周病の原因となる細菌にアプローチした点が画期的なのだ。
虫歯や歯周病は、細菌感染症である。人間の口の中には300種類以上、計60億を超える細菌が存在している。無害の菌も多いが、病原性をもつ悪玉菌は虫歯をつくる。虫歯の原因菌は、4歳までに母親から受け継いだもの。いくら磨いても虫歯になる人がいるのは、そうした細菌のせいなのだ。
「口腔内の細菌は人によって異なるため、まず病原性が高い特徴的な細菌をPCRという検査で5〜6種特定します。その上で、その人がもつ菌の危険度、量を調査し、薬液で対処するのがいいのか、あるいは光を当てる方法やブラッシングがいいのかなど、その人にあった方法を選びます。また、74項目にわたる血液検査を行い、不足している栄養素を見つけて、生活習慣の指導を行うことも、歯茎の炎症の予防になるのです」
気になる治療費だが、カウンセリング料1万円、検査費用がプランによって数万円から。そして1年以上かけた本格的な治療には100万円以上が必要となる。問題は、一生丈夫な歯を保つための費用として、それを高いと感じるか否か…。
「富裕層向けの歯科だと思われがちですが、違います。意識の高い人向けです」と、中原は断言する。
「保険医療制度は国の公共事業。保険診療では、医療方針と報酬について国の決定に従わざるをえない。だから、自由診療で勝負しようと思ったのです」と言う。
開業2年目の1991年に保険医を返上。翌92年には日本人として初めてアメリカ美容歯科学会で認定医を取得した。
「生物の起源は、ホヤなど口だけの脊索動物で、そこから次第に腸管、心臓、脳ができていった。口は全身とつながっていて、全身の健康と関わっています。医科と歯科は切り離すべきではないのです」
そう話す中原は歯科医として、認知機能の専門医や精神科医と提携した医療にも取り組んでいる。
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