高岡美緒が取締役を務めるマネックスベンチャーズは、マネックスグループのCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)。ユーザベースには09年に投資を行っている。
梅田:高岡さんをはじめとしたマネックスベンチャーズとの出会いは、創業2年目の09年春。「SPEEDA」を1年かけて完成させ、いよいよ次のステップへという時期でした。ただ当時は、リーマン・ショック直後という厳しい状況の下で資金調達に向けて奔走していました。我々のオフィスはまだ狭いマンションの一室でしたが、なんとか投資をしてもらいたいと綺麗な会議室を借りて、高岡さんたちとミーティングしたことを覚えています。ただ結局、オフィスの見学を希望されたので、無意味でしたが(笑)。
高岡:当時のオフィスは、スタートアップを絵に描いたような場所(笑)。それでも投資をしたのは、明確な事業コンセプトがあったから。「企業情報や金融情報を、Google検索のように、手軽に使えるようにする」というビジョンには、「金融の民主化」を目指すマネックスとしても、共感しました。個人的には、投資銀行時代に、苦労して作成していた資料が、SPEEDAを使えばワンクリックで作れるのが魅力的でしたね。
梅田:サービスの可能性を理解していただけたのも、高岡さんが投資銀行の現場を知っていたからこそ。最初の資金調達先となってくださったことで、事業を成長させられました。
高岡:とはいえ、不安な点もいくつかありました。例えば、友人関係である創業者3人が共同で経営していくことは、"教科書的"にはありえません。しかし現在の姿は、3人の取締役のバランスが絶妙なんです。起業家として秀でた梅田さん、総合商社出身で営業力のある新野良介さん、社内の雰囲気を盛り上げる熱血エンジニアの稲垣祐介さんー三者三様の持ち味を生かして、事業の舵取りをしている現状を見ると、余計な心配だったようです。
また、梅田さんは、家族との生活も大事にしている起業家。当時の起業家のイメージは「24時間仕事。遊びも豪快」でしたが、梅田さんは葉山に住んでいて、飲み会も早々に切り上げるなど、仕事とファミリーにしっかりと優先順位を付けて、両立している新しい起業家だと思います。