「自動運転システムの信頼性を担保するためには、かなりの量の公道走行やバーチャルなテストを実施しなければならない」とトヨタの豊田章男社長は10月1日のパリモーターショーで述べた。豊田章男社長は、トヨタ創業者の孫に当たる。
シリコンバレーに研究施設
トヨタは、自動運転車の開発を加速させるため、シリコンバレーにトヨタ・リサーチ・インスティチュート(Toyota Research Institute、TRI)を設立し、10億ドル(約1,000億円)を投入することを発表した。TRIは、自動運転車の他にもロボット開発や先端素材の研究を行なう。TRIの責任者には、自動運転車開発の現在に至るまでの原点とも言える、DARPA(国防高等研究計画局)でロボットカーレースを率いてきたアメリカ人科学者のギル・プラットが就任した。
「TRIのゴールは、トヨタが目指す自動運転車を実現することだ。トヨタは自動運転車の開発において2つのアプローチをとっている。1つは完全自動化であるショーファー(運転手)・モードの実現だ。これにより、老人や障害者など、これまで車を運転できなかった人にモビリティを提供することが可能になる。完全自動化を実現するためには、シミュレーションを含めて142億キロメートルのテストが必要だ」と豊田社長はパリの記者発表で述べた。
トヨタが取り組んでいるもう1つの自動運転技術が、「ガーディアン(守護者)・モード」だ。「この技術は、現行の衝突回避支援パッケージであるToyota Safety Senseを進化させたものだ。ドライバーが運転中に事故に遭いそうになったら危機を回避し、状況に応じて自動運転に切り替わる」と豊田社長は説明する。
先月、米運輸省は自動運転車の開発や公道走行に関する初めてのガイドラインを発表した。ガイドラインには、「自動運転車の安全設計、開発、テスト、公道走行」を規定する15項目の安全評価基準が含まれる。しかし、完全自動運転車が市場に投入される時期はまだはっきりしない。一部のメーカーは2020年代初頭にリリースすることを目標にしている。
グーグルは約60台の自動運転車を走らせ、これまでに200万マイルの公道テストを実施して自動運転技術を世の中に広めてきた。そのグーグルですら、いつどのようにして自動運転車を発表するかを明らかにしていない。