ビジネス

2016.10.13

シリコンバレーで言われたこと[樋原伸彦のグローバル・インサイトvol.2]

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1980年代半ばからはすでに30年経った。1990年代には、金融危機など日本経済・日本企業には色んな黄信号が出た。そこからも20年経った。しかし、いわゆる失われた20年の間、そして日本は海外から依然として学び続けている(冒頭で述べたように、シリコンバレーは日本から派遣された優秀な人達で溢れている)にもかかわらず、結果を出せていない。

日本の皆さんは上品だからあまり言わないけど、頻繁に米国に行っている僕からすると、特にここ最近、米国と比べると日本は貧しつつあるというのが実感できる。円安のせいだと信じたがる人も多いけれど、今為替が100円近辺になったところで貧している感じからは抜けきれない。

格差の問題も重要だけど、この「日本全体が他国比で相対的に貧しつつある」というリアルは是非共有していただきたいと思う。

そのような状況の中、2016年秋、ソトの人の目には、現在の日本は、バランスを保つのがかなり難しそうな「先鋭化した逆三角形モデル」のように映るようだ。この危ういバランスの逆三角形が、現在の財政赤字の状況を示しているような気がしないでもない。

この状況に直面して考えられる解決策の一つは、逆三角形の隣に、「普通の三角形」を、最初は小さくてもいいからせっせと作っていくことだろう。


つまり、底辺にあたる民間のベースを広げていくこと。そして、そのうち、左の大きな逆三角形は縮小していくはずだ。その縮小プロセスは、政府の言うベストプラクティスに素直に従って、補助金のような予算や公のお金が流れているだけの(つまりビジネスとしては結果が出せていない)民間企業やその他の組織が健全に淘汰されていくプロセスでもある。

またそのプロセスによって、小さい方の真っ当な三角形が大きくなっていくはずだ。なぜなら、逆三角形にかかりっきりになっていたヒューマン・リソースが動いて、今度は、小さいほうの真っ当な三角形の底辺のベースを広げるために頑張ってくれるはずだからだ。

民主党のトップマネージメントは交代したが、その後の国会の論議を聞いていても、どうも、自民党も民主党も、ここでいう「逆三角形をいかに大きくしていくか」の政策を競っているように聞こえる。これは、民主党が政権に就いていたころにも薄々判明してしまったことでもあるが。

誤解を恐れずに言ってしまえば、つまり、イデオロギー的には目指しているのは同じ「大きな政府」だ。その上で、どっちの提案するメニューが好きですか、という有権者への問いでしかなく、政策論議が盛り上がらない遠因になっている(蛇足だが、その競争においては、財政赤字の問題はどちらも忘れたくてしょうがないのだ)。

健全な政権交代が起こりえる政治システムの構築のためには、ここでいう「普通の三角形」を目指してくれるような政党が一方にないと、難しいだろう。それは「小さな政府」をちゃんと標榜してくれるような責任政党だ。

レベルの上がって来た日本の今の有権者なら、そのような政党を喜んで受けいれてくれるのではないのだろうか。大きい政府にしても小さい政府にしても、外交の選択肢はほとんどないのだから、やはり、ちゃんと経済政策で根本的に競える対抗軸ができれば、日本の将来は全く捨てたもんじゃないと思う。

10年後ぐらいには、米国の友人たちに、「日本変わったでしょ?」と胸を張って言いたいものだ。(第二回終わり)

文=樋原伸彦

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