谷本:そのようなバックグラウンドだからなのか、ふじようちえんは、幼児教育は勿論、経営という観点にもおいても非常にバランスが取れているように見えます。
加藤:父ちゃん母ちゃん企業だからですよ(笑)。副園長(妻)がいなかったらできなかった。私だけでは無理だった。一般企業出身の二人で、ひとつひとつ「おかしいな」「足りないな」と思うものを変え、新しいものを作り出してきたんです。
谷本:ふじようちえんは、幼児教育のみならず、先生たちの自主性も重んじていると伺いました。
加藤:そうですね。先生たちに自発的に活動してもらうために、面白いと思うものはどんどんやってもらっています。
例えばサタデースクール。土曜日に様々なイベントを先生主導で催しています。バター作りやイチゴ狩り、BBQ。中でも「おひめさまになろう企画」は大変人気のあるコンテンツです。参加費は3,000円ですが、利益はすべて先生たちで分配していいようにしています。
こういう機会を通じて先生にも「利益が生まれる瞬間」を感じ、経費感覚を養ってほしいんです。実際、自分たちが企画したイベントで人が集まったり、喜んでもらえることで、生きがいも感じてもらえているようです。
谷本:まさに、ふじようちえんに関わるすべてのステークホルダーが満足するという「三方よし」の精神ですね。
加藤: 子供よし、家庭よし、先生よし。この三方よしが派生して、今度は地域を良く・・・と、それがどんどん広がっていく。私がしているのは、「理念のデザイン化」なんです。そして、その理念とは「幸せな未来をつくること」なのです。
谷本:最後に、加藤園長の夢はなんですか。
加藤:小学校をやろうと思っています。もともと、ふじようちえんは「どうすれば『子供の育ち』にいいのだろう」という思いがコンセプトになっています。それには幼児期が大切だということで、ふじようちえんを作った。
しかし、そこで終わってしまっては勿体ない。そこで考えているのは、ふじようちえんの「付属小学校」(笑)です。しかも、「世界から人が集まる小学校」を2020年ぐらいに作りたいと思っています。
加藤積一◎1957年東京都生まれ。1980年法政大学社会学部卒業。商社勤務、ケーキ店経営などを経て、1992年藤幼稚園入社。2000年に園長就任。現在、NPO法人全国元気まちづくり機構理事、私立幼稚園経営者懇談会会員も務める。