これにより、新興国の中央銀行はいずれも人民元を、自国の外貨準備に取り入れる価値がある通貨とみなすようになるだろう。米ドルの国際貿易における支配的な地位や、世界の準備通貨としての地位が今すぐ人民元によって脅かされることはないとみられる。だが、人民元は今回の変更により、流動性の安全な避難場所の一つとなった。さらに、ユーロや円といったその他の避難場所とは異なり、人民元は実際に利益をもたらしている。
影響と今後に予想される状況
IMFは2015年11月30日、SDRの構成通貨に人民元を含めることを決定。「通貨バスケット」における構成比は10.9%としていた。バスケットに含まれるほぼ全ての通貨を保有している新興国の中央銀行が、即座に人民元を買い始めることはなさそうだが、自国の通貨がSDRに含まれる各国の人民元の需要には、間接的な影響が出てくるだろう。
現在、大半の国の中央銀行が最も多く保有しているのはドルで、次いでユーロの保有額が多い。個別の通貨として人民元は通常、それほど重視されていないが、香港上海銀行(HSBC)のエコノミスト、ポール・マッケルらがまとめ、9月13日に公表した報告書によると、IMFによる人民元の主要通貨への組み入れの決定は、同通貨の「長期的な需要の支持」を意味するものだ。
マッケルは、「人民元がSDRに加えられたことは中国側からみれば、自国の金融市場と世界市場との統合を推進するための改革の後押しになる。また同時に、人民元の国際化をさらに進めることになる」という。
中国人民銀行によると、今年3月から6月までの間だけでも、外国人投資家らによる人民元建て債券の保有高は、約1,000億元(約149億ドル、約1兆5,100億円)増えている。さらに、中央国債登記結算有限責任公司のデータによれば、外国人投資家らは8月に入り、中国債権を買い戻し始めている。