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2016.10.03

市場規模6兆円の中国保険業界 P2P型「助け合い保険」も急増 

Hung Chung Chih / Shutterstock

中国で2018年までに市場規模600億ドル(約6兆815億円)以上に成長する可能性を秘めたセクターが存在する。保険とテクノロジーを組み合わせた「インシュアテック(insurtech)」と呼ばれる領域だ。

中国の保険市場は現在世界第3位であり、オンライン保険の売上は2018年までに市場全体の12%を占めるようになるとアクセンチュアは見ている。中国保険行業協会 (Insurance Association of China)によると、2015年上半期のオンライン保険の掛け金は120億ドル(約1兆2,100億円)に上った。

中国の大手オンライン保険会社衆安保険が8月、1年以内のIPOを計画していると発表したことも、同業界の成長を表している。

損害保険や災害保険を扱う衆安保険は2013年、中国初のオンライン専門保険会社として創業した。中国のテック大手アリババやテンセントなどが出資している。同社最大の収入源である商品が、アリババのショッピングサイト「タオバオ(淘宝網)」における返品時の送料を補償するものだ。

時価総額80億ドル(約8,110億円)とされている衆安保険がこれまで調達した資金はおよそ9億3,000万ドル(約943億円)と、競合他社を圧倒している。調査会社CBインサイツによると、2010年以降、中国における他のインシュアテック系スタートアップ20社が調達した金額は、合計でおよそ2億500万ドル(約208億円)だ。

CBインサイツのシニア・リサーチ・アナリストのMatthew Wongは「(インシュアテック系企業は)商品のイノベーションを進め、急速に成長しています。衆安保険は中国における保険イノベーションで大躍進していますが、今後も発展は続くはずです」と分析する。

インシュアテック業界に参入する企業は増えている。2016年4月にアリババグループのアリババ・ヘルスが大手保険会社の太平保険ほか4社と組んでオンライン保険の合弁会社を設立すると発表した。オンライン自動車保険のCheche Chexianは2015年のシリーズAで1,500万ドル(約15億円)を調達している。

P2P型保険の成長も期待

だが真の成長を期待できるのはピアツーピア(P2P)型の保険かもしれない。NewMargin CapitalのベンチャーキャピタリストJonathan Li は、P2P型保険市場におけるスタートアップの評価が爆発的に上昇した2016年以前から、同社は注目していたという。

「ニッチなセクターであり、自助努力というニッチコミュニティー独特の雰囲気もありました。しかしP2Pが注目を浴び、突然多くの企業が参入するようになったのです」とLiは語る。

P2P型保険のスタートアップ同聚保もそういった企業の1つで、離婚や子供の行方不明など社会的なリスクに対する保険を販売している。顧客同士でグループを作ってそのグループ内で掛け金をプールし、たとえば離婚のリスクに対するグループであれば離婚者が出なかった場合、全員に掛け金の一部が返金される仕組みだ。同社の創業者Tang Loaecによると、現在顧客は3万3,000人いる。
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編集=上田裕資

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