岡部:いわゆる「グローバル人材」というものがあるのではなく、“海外に行っても日本でやっているのと同じようにやれる”ということが本当の「人材のグローバル化」なんです。そういう意味で、日本人には往々にして、成功のための大事な習慣のひとつである「勤勉さ」があるし、あとは各個人が日本であろうと、海外であろうと、自分の強いところを発揮できるようにすればいいだけだと思います。
谷本:自分の強みを見つけられない人も多いです。
岡部:見つけるには、自分の専門知識や専門性を、とにかく深く掘ることです。僕は持論として、それにプラスして「移る」という要素を大事にしています。
経営学者ピーター・ドラッガーが成長の三原則として「移る・教える・現場に出る」と言っていますが、僕はこれまで、東京からベトナム、シンガポール、シリコンバレー、そして、ヨーロッパへと「移って」きました。その結果、現在で6か国、20年間海外に住んでいる。異なる大陸の異なる国々で、様々な価値観、慣習、仕事のやり方などに肌で触れてきた経験は、実際、今のドリームジョブをつかむことにも役立ちましたし、現在も仕事上で活きています。
谷本:今のキャリアは岡部さんにとってはある意味ゴール、完成形に近いイメージですか?
岡部:全く違います。ファーストステップに過ぎません。私の夢は日本がワールドカップで優勝すること。僕だけでなく、サッカー協会も言っていますが、2050年の優勝を目指しています。その時、僕は78歳です。けれど、決して夢物語ではない。
ワールドカップって優勝した国が8か国しかないんです。しかも、南米とヨーロッパのみ。イギリスやフランスなど、一度しか優勝してない国も結構あるんです。彼らがいつ優勝したかというと、彼らの自国開催のときなんです。英語でいうホームアドバンテージというものです。これはめちゃくちゃ強い。
日本も初めて決勝トーナメントに出たのは自国開催のときです。しかも簡単に勝ち抜いていった。つまり、ワールドカップで日本を優勝させたかったら、日本で開催するというのが確率論として1番重要な要素のひとつなんです。そして、ローテーションシステム(毎回、開催国を大陸ごとにまわしていく)を考えてみると、次に持って来られるかもしれないタイミングは2050年くらいなんです。