ビジネス

2016.10.06 10:45

日本におけるBoPビジネスのブームと現状、BoP1.0からBoP3.0へ

photo by Jonathan Torgovnik / gettyimages

BoPビジネス。2009~2011年ころ、日本各地で関連するイベントがおこなわれるとともに、TVや新聞等、多くのメディアにおいて、新興国における新たなビジネスチャンスとして取り扱われていたため、名前くらいは聞いたことがあるのではないだろうか。

BoPとは、Base of the Pyramidの略称であり、貧困等のグローバルイシューを解決するとともに企業の持続的な成長を促すビジネスである。

一人当たり所得3,000ドル未満の人々は世界のマジョリティ(70%)を占めており、彼らはBoP層と呼ばれている。

日本ではBoP元年とされる2009年以降、多くの日本企業が事業に取り組んできた。例えば、味の素は乳幼児の栄養改善に、パナソニックは無電化地域の電化に、ヤマハ発動機は農村部における安全な水の供給に、ビジネスとして取り組んでいる。

また、JICAは2010年から企業に対して最大5,000万円の調査資金を提供しており、過去10回の公募で600件以上の応募があり、採択件数は114件に達する。しかしながら、最近BoPビジネスがメディアに登場することは少なくなった。結局、よくある海外から来た三文字言葉の経営用語として、一時のブームを起こしたに過ぎなかったのだろうか?

実際には、日本においても、そしてもちろん世界においても、BoPビジネスは進化し続けている。世界の潮流にのって進化し続ける日本企業も存在する。本連載では、「BoP3.0 Sustainable Development through Innovation and Entrepreneurship」の日本語版翻訳書として出版された「BoPビジネス3.0」(英治出版)に基づき、BoPビジネスの発展について解説していく。

さて、これまでBoPビジネスにはBoP1.0とBoP2.0が存在するとされてきた。簡単に言えば、BoP1.0とは、企業が自社の事業拡大のためにBoP層を消費者としてのみ捉え、小分け、小型化した製品等を販売するといった市場探索型のビジネスモデルである。

これに対して、BoP2.0は「相互価値の創造」という考え方を重視し、BoP層を消費者としてだけではなく事業パートナーとして捉え、深い対話の中でBoP層のニーズを見出し、そのニーズを協力して満たしていくビジネスだ。

そして、2015年にBoPビジネスの提唱者の一人であるスチュアートハート教授により、世界各地域からこの分野における第1人者が招集され、世界中のBoPビジネスにおける最新動向を取りまとめることによりこのビジネスの発展形「BoP3.0」が提唱されるに至った。


BoP3.0を提唱したBoP Global Networkのメンバー、中央がスチュアートハート教授、筆者は一番左。

わかりやすく言うと、BoP1.0、BoP2.0があくまでも一つの企業や一つのビジネスで完結した概念であったのに対し、BoP3.0は、複数の事業者・組織が協力し合いBoP層と共にビジネスのエコシステムを創造するといったことを重視したビジネスモデルである。

また、これまでBoPビジネスにおいて重視されてきた貧困削減というテーマから持続可能な開発へと視点を広げることも提唱されており、まさに持続可能な地域・国・産業づくりを通じて事業の収益性と社会インパクトを高めていくモデルとしてBoP3.0の提唱がなされている。具体的な企業のアクションとしても、BoP1.0、BoP2.0のように企業単位の事業だけではなく、地域・産業全体を視野に入れたエコシステムを形成する仕掛けの創出が求められる。
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文=平本督太郎

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