ビジネス

2016.09.30 08:00

ウーバーが恐怖に震える「幽霊ドライバー」 顔がゾンビとの報告も

Photo by Kletr / Shutterstock.com

問題が続出しているウーバーの中国事業で、新たに「幽霊ドライバー」による詐欺トラブルが明らかになり、中国のメディアで大きく取り上げられている。

ここ1週間ほどで、多くの中国人ユーザーがこの幽霊ドライバーの被害に遭っている。フォーブスが数人の被害者にコンタクトをしたところ、いずれの場合もウーバーのアプリを使って配車依頼をしたがドライバーは現れず、電話にも応答しなかったが、10元(約150円)ほどの運賃を徴収されたという。

「9月だけで2回も被害に遭った。ドライバーの顔写真はいずれもゾンビのようだった」と上海在住のマーケティング会社幹部であるステファニー・ヤンは話す。被害者がウーバーに被害を訴えたところ、運賃は返金されたという。配車アプリのユーザーアンケート調査を行なうiiMedia Researchのチャン・イによると、同様の被害が中国全土で毎日のように報告されているという。

「これは大がかりな詐欺行為だ」とチャンは言う。今のところ、ウーバー以外の配車アプリでは幽霊ドライバーによるトラブルは発生していない。このため、アナリストの多くはウーバー中国法人の経営陣が交代したことや、中国政府によるウーバーに対する規制措置によってウーバーの社内体制が弱体化していることが原因ではないかと分析する。

ウーバー中国法人は、毎年10億ドルもの巨額損失を出し続けながらもシェアを伸ばすことができず、8月に中国の配車アプリ最大手の滴滴出行(ディディ・チューシン)に事業を売却した。ウーバーはこれまで巧妙さを増す詐欺の手口に対策を講じてきたが、ディディによる買収からわずか2か月で事態は悪化している。

調査会社フォレスターのワンも、ウーバーの不正対策が劣化している背景には、経営幹部の退任があると指摘する。かつてウーバーで不正対策チームの責任者を務めたYin Zuoningは、9月初旬に中国の配車サービス会社「Yidao」に移籍した。Yidaoには中国のオンライン動画大手「Letv」を運営するLeEcoが出資している。Yidaoには他にもウーバー中国法人の元幹部が流入している。

ニセの顔写真が社内チェックを突破

「ウーバーの組織力が強かったときには、詐欺トラブルは発生しなかった。しかし、今では社内が混乱して不正対策が後手に回っている」とワンは話す。

ウーバーは、ドライバーを採用する際にプロフィール写真と運転免許証、保険証のアップロードや、オンラインテストの受験を義務付けている。しかし、「ウーバーの顔認識システムは、幽霊ドライバーたちのデジタル加工された写真を見抜くことはできなかった」と北京のコンサルタント会社、Analysys InternationalのアナリストであるWang Chenxiは指摘する。

これまでにも、中国の配車アプリ業界では詐欺事件が発生している。1月には杭州市でウーバーのドライバー2人が14万元をだまし取ったとして地元警察に拘束された。また、5月には北京の裁判所が、ディディのドライバーと共犯者がGPSソフトウェアを使って架空乗車により多額の運賃をだまし取ったとして、それぞれ8か月と1年の懲役刑を言い渡した。

ウーバーとディディは合併を表明後、黒字化を目指して乗客に対する割引を減らしたため、乗車料金が急激に値上がりし、iiMediaは混雑時には運賃が通常時の4倍になることもあり、乗客の苦情が増加しているという。アナリストらは、今回の幽霊ドライバー騒動によってユーザーの不満はさらに高まり、競合のサービスに乗り換えるユーザーが増えてだろうと予測している。

編集=上田裕資

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事