谷本有香(以下、谷本):教育の2020年問題(※2020年度から大学入試制度が変わる)が取り沙汰されるようになり、教育のあり方がいま見直されています。
高濱正伸(以下、高濱):その背景にあるのは、これまでの教育、つまり、人間作りのやり方では、これからの時代成り行かないということが明らかになったということです。新しい時代には、これまでの知識量のみの学力から、新しい学力、つまり「思考力・判断力・表現力等を含む生きる力」を問うような学力が求められています。
しかし、一方の親御さんたちは東大に行けるかどうかしか見ていない。口では、人工知能時代の教育について議論しているのに、我が子の話になると、やはり「子供は弁護士に、医者に」と、これまでのレールに乗せたいと思ってしまう。そこにすごいギャップを感じます。
谷本:これからの時代に求められる人材のロールモデルのような方はいらっしゃいますか?
高濱:ヤフーの最年少役員の宮澤弦さんですね。音楽家ばかりの家庭で育ち、幼稚園最後の1年は、父親が彼と遊ぶために幼稚園を辞めさせた。そして、毎日、自分たちでボートや基地を作ったりして遊んだそうです。そういう経験や親御さんの育て方が、後の彼の感性につながっていると思うんです。
孫正義さんのような見る目を持った人間は、そういう人をぱっと見抜いてしまう。つまりは、感性が重要なんです。
そういう意味においては、情操教育として音楽や美術が良いと以前から言われていますが、重要なのは主体性です。自分が楽しいと思ってやっているかどうか。ここが弱い人が多い。そこが強いか弱いかはすべて幼児期の経験が元で、小さい時に「これが好き」という決断をしているかどうかなんです。消しゴムのカス集めだって、自分が「これだ」と思ってやっている子は、何をやらせても強い。決めるところからスタートしているからです。
実は人間は、本質的にはなんでも好きになれるようにできています。自分はこれだと決断している人生だと自分に自信がもてるようになるんです。
谷本:これからの時代に必要な人材の素養や資質を言語化するとしたら、どのように表現されますか?
高濱:「メシを食っていける力」です。時代がどう変わっても、柔軟な思考力と強靭な体力で乗り切っていける人です。
谷本:メシが食える人間、これからの時代に成功しやすい人間を育てるために、親はどうしたらいいのでしょう。