一方、米誌サイコロジー・トゥデーは、「病的虚言」は正式な病名ではなく、反社会性人格障害や境界性人格障害、自己愛性人格障害などのさまざまな病気と関連付けられた症状だと説明。アラバマ大学バーミンガム校のチャールズ・フォード教授の話として、こうした人々にとって、虚言は無意識的に発せられるもので、ある事柄が「起きたかもしれない」という不確定情報はすぐさま「起きた」という確定情報にすり替わると解説している。
ニュースサイト「Vox」は、トランプには自分の都合に合わせて次々と虚言を繰り出す傾向があると指摘し、その理由を理解するのは不可能だと結論している。ウェブサイト「ライブ・サイエンス」もエール大学のチャールズ・ダイク教授の話を引用し、「病的虚言者には、自身の利益につながらないような虚言行為を頻繁に繰り返す傾向がある」と、Voxの結論と共鳴する解説を行っている。
だがサイコロジー・トゥデーの記事には、トランプの心理の一端を説明できるかもしれない記述もある。同誌は心理学者のロバート・ライシュ博士の話として、「職を得るといった目的を達成するための虚言は理解しやすいが、『第1次疾病利得』のための虚言、つまり、直近の利益をもたらすことなく異なる自意識を作り出す虚言は、見抜くことがはるかに難しい」と説明。これには自尊心が関与しており、「今の自分に満足していなく、別人になりたいと思う」欲求が背景にあると解説している。
討論会でトランプは、ヒラリー・クリントンから自尊心を傷つけられるような発言を投げ掛けられるたびに、ことごとく食って掛かっていた。だが一方で、トランプは米大統領の職を欲しているようにも思える。
今回の討論会では、両候補のうち大統領職にふさわしくない人物は1人だけであることが裏付けられた。その人物とは、自身の気性や虚言癖を抑えられないことを繰り返し実証したトランプであり、彼の国家指導者としての資質には大きな疑問が投げかけられている。