「好きなこと」は本当に仕事になるのか? それを実現させた女性がいる。ジャパンメイドのエシカルファッションブランドを手がける「Ayuwa」代表の渡部雪絵さんだ。会社員としてこれまで働いてきた渡部さんは、今年、起業という道を選んだ。「好き」を仕事にして、毎日輝く渡部さんに、お話を伺った。
谷本有香(以下、谷本):渡部さんが立ち上げられたAyuwaについて聞かせてください。
渡部雪絵(以下、渡部):Ayuwaは、ワンピースと男性のポケットチーフを展開するファッションブランドです。コンセプトは“エレガント”と“エシカル(道徳・倫理的)”。単なるアパレル企業ではなく、社会に貢献していきたいという思いで立ち上げました。
その一つの手段として、日本製にこだわることで、高度な縫製技術を誇る日本の繊維産業を支援しています。また、売り上げの5%を子ども支援活動に寄付をするプログラムを作り、購入者の方にどの団体に寄付するか選択いただいています。ファッションを通じて日本に寄付の文化を広げ、未来を創っていきたいと思っています。
谷本:とても高い志をお持ちですが、どうしてそこに行きついたのでしょう。
渡部:バブル崩壊で父の会社が倒産したこと、妊娠を機に当時勤めていた会社から退職勧告されたことがターニングポイントでした。
私が最初のキャリアに銀行を選んだのは、父の会社の倒産がきっかけでした。倒産は「金融に関する十分な知識や情報がなかったからではないか」と考え、その分野に強くなり、情報を発信をする仕事をしたいと考えたのです。3年ほど営業として働き、経済記者に。その後証券会社を経てファンド会社へ転職しましたが、妊娠後に会社から退職勧告があり、「一旦リセット」だと思い退職しました。
谷本:そして、その後に起業されるわけですね? なぜ、起業だったのでしょう。
渡部:出産後は、元の会社員のポジションには戻りたくないというプライドがあったんです。それで、起業を選びました。
また、子育てをする中で、待機児童や虐待など子供の教育の問題を“自分ごと”として考えるようになったことも大きいです。問題も多いけれど、その解決やサポートに取り組む団体や活動はたくさんある。でも、資金が足りず活動ができない。そんな現実を知り、寄付プログラムのあるブランドを始めました。
谷本:子供の支援をしたいと考えた時、例えば政治家として制度を変える方法もあったかと思うのですが、なぜファッションで支援しようと考えたのですか。
渡部:金融や投資の分野に関わってきた経験を活かし、寄付という形で資金面の支援をしたいと考えました。また、最初は子供向けのオーガニック紙おむつブランドを作ろうと考えていたんですが、調べてみると初期費用が2~3億円かかると知り、諦めました。
どうしようかと悩んでいた矢先、友人から誘われた食事会で上場企業のCFOと縁があり、事業計画を見ていただく機会を得たんです。その時に聞かれたことは「おむつ、本当に好き?」という素朴な質問。そして、「好きなことを仕事にした方がいい」とアドバイスいただいたんです。
谷本:それで、ご自身の「好き」がファッションだったのですね。
渡部:ワンピースでした。とにかくワンピースが大好きで、恋をしているような感覚です。「これを仕事にしよう!」と決めました。実際に「好き」を仕事にしたことで、その原動力がどんどん大きくなっていることに自分でも驚いています。