「プロ経営者」として強いコミットメントで組織改革を推進。7期連続増収増益と躍進を続けるカルビー会長・松本晃は、いかに改革を成功させたのか。
働く女性の視点で販売の活性化に成功した「フルグラ」。狙いをシリアル市場から朝食市場へと発想を転換させ、米ケロッグの牙城だった国内シリアル市場を切り崩した。4年で年商は6倍。カルビーの業績好調の強い推進力となり、540億円といわれるシリアル市場でフルグラの売り上げが220億円を超えた。
ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)の日本法人社長などを歴任しカルビーのCEOに就任したのは2009年。フリーアドレスなどを取り入れたオフィスや人事評価の“見える化”など「働き方」改革も進める松本晃の根底にあるのは、徹底した「成果主義」だ。
─女性の管理職登用に数値目標を取り入れるクオーター制に賛成の立場を取られている。
私はとにかくデジタル人間。数字がないと体が動かない。カルビーでは今、10・20(テン・トゥエンティ)と言っている。毎年売り上げを10%伸ばせ、利益を20%伸ばせ、と。就任して7年間の数字の結果は、ほぼ伴っている。
ダイバーシティも同じ。J&Jの時は、35・25・25。「社員の35%は女性、管理職の25%は女性、エグゼクティブ/ディレクター以上の25%は女性。これを退職までに達成する」。これで終わり。実際に達成した。カルビーでは「20年までに女性管理職比率30%一番乗り」を目標に掲げている。今、22%。30%になったら、次は「50%にしたら」、と言う。
─ダイバーシティの重要性を実感するきっかけは。
J&Jの社長をしていた01年のこと。直属の上司だったビル・ディアスタインから「日本はなぜダイバーシティをしないんだ?」と聞かれた。「こんなに女性管理職が少ないのは日本とパキスタンくらいだぞ」と。
当時は私もダイバーシティについてよく分かっていなかったが「言われてみればその通りだな」と。世の中の半分は女性なのに、マネジメント層は男性ばかり。優秀な人は男女を問わず優秀。これでは片翼しか使わずに飛行しているようなもの。企業が成長できるわけがない。
─重要性は分かっていても、実現できない企業が多くある。
ポイントはある。1つは、トップがはっきりコミットする。さらに数字でコミットすること。登用は上からやる。下級の管理職から細々とやるのではなく、上級管理職を早く女性にすれば、あとは早い。
─候補者がいないという声もよく聞く。
それは嘘。探していないだけ。「来年からこのポジションは女性にしろ」。これで終わり。あと、誰が良いのかは分からないが、皆で決めろ、と。そうすれば候補が挙がってくる。その中から1番、2番、3番の人と決めて、1番いい人からオファーする。