エルスウェアはプラスチック製のヘッドセットとiOS対応のアプリで構成されている。一見グーグルのVRヘッドセット「カードボード」に似ているが、決定的に違うのはカードボードがVR処理された動画しかVR表示できないのに対し、エルスウェアはどんな2D動画でもVR向けに変換できる点だ。
つまり家庭で撮った動画などもVRに変換できるというわけだ。筆者が参加したデモでは1940年代のドイツの貴重な動画がVRで視聴できた。ナチ統治下のドイツをただ見ているのではなく、実際に第二次世界大戦中のドイツの街中に立っているという、不気味で恐ろしい感覚を得られたのだ。
エルスウェアを生み出したのは音楽ストリーミングSongzaの創業者エイザ・ラスキン(Aza Raskin)とデザイナーで起業家のWendellen Liの夫婦だ。二人は2014年にSongzaをグーグルに売却。買収額は正式には明かされていないが、一部メディアは約1500万ドル(約15億円)と報じていた。その後、彼らはオークランドの自宅やコワーキングスペースで、自己資金のみでこの製品を開発したという。
ヘッドセットは中国の深圳市で1万セットを製造、アセンブリと出荷はアメリカで行っている。ヘッドセットとアプリは合わせて50ドル(約5,000円)で、公式サイトから購入できる。アンドロイド対応のアプリもいずれ公開予定という。
アプリにはVRモードとAR(拡張現実)モードがある。ARモードではスマホのカメラを利用し、周辺を3Dの動画で撮影できる。鏡を見てみたり、テレビ画面にスマホのカメラを向けてみたりするのも面白いだろう。「(エルスウェアを利用して)テレビドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』でジョン・スノウが踏みつけられているシーンを見て、思わずヘッドセットをはずしてしまいました。それぐらい強烈だったのです」とLiは言う。
ラスキンらは、ユーザーがエルスウェアを利用してお互いの経験をシェアするようになってほしいと願っている。「私の父は毎日、食事をしているときの食べ物の3D動画を送ってきます」とLiは語った。