政治、組織が問われた2016年夏…[樋原伸彦のグローバル・インサイト vol.1]

Photo by Chris Brunskill-FIFA/FIFA via Getty Images

一つ目は、通常の目に見える能力、リソース。サッカーで言えば、個々のプレーヤーの能力、優秀な選手の数などで、最も一般的な能力のカテゴリーだ。

二つ目が、プロセス力。組織としてのアウトプットを生み出すためには、ファンダメンタルな能力・リソースをどのような手順で組み合わせていくのかを決めなくてはならない。サッカーで言うなら、4-4-2で行くのか、3-5-2で行くのかといったフォーメーションの意思決定、それから、交替の選手のカードをどう切るか、などがこれに当たる。監督の采配力と言ってもいいかもしれない。

普通の事業会社であれば、組織として意思決定するための決裁プロセスをどうするか、などがこれに当たろう。社長からのトップダウン中心のプロセスにするのか、あるいはボトムアップのプロセスにするのか、といった選択だ。

三つ目は、組織としてどう優先順位をつけていくかという能力だ。リソースというのはどこの組織でも限られている。その中で、いかにうまく取捨選択ができるかという能力だ。サッカーについて言えば、日本サッカー協会の役割になるのかもしれない。監督を誰にするのか。五輪前の事前の試合をどう組むのか。オーバーエイジの選手として誰を呼び、どう実際の試合で使うのか、などの判断能力がこの三つめのcapabilityと言える。

このように、組織能力というものを三つに分けて考えてみると、かなり見晴らしが良くなるのではないだろうか。さらに言えば、二つ目のプロセス力と三つ目の優先順位の判断力は、より昇華していくと、組織文化といえるものになってくる。「ブラジルのサッカー」「日本のサッカー」「リアルマドリッドのサッカー」という様に人々には認識されるようになる。

さて、今回の五輪で日本のサッカーの組織能力は発揮されたであろうか。個々の選手の能力は高かったが、プロセス力と優先順位判断力では色々と問題があった気がする。そこに少しだけ、工夫があれば、十分決勝トーナメントには進出できた気がする。その意味でも、プロセス力、優先順位判断力、さらには組織文化は、組織の勝敗を左右してしまうのだ。
 
今回の五輪で日本は予想以上にメダルを量産した。その理由はおそらく、4年後の東京を見据えて、上述したプロセス力や優先順位判断力を研ぎ澄ますインセンティブが高まったからではなかろうか。

これはおそらく、企業経営でも応用可能だろう。特に大企業の場合は、効果はすぐ現れるような気がする。

スタートアップ企業の場合は、たぶん話はもう少し複雑になる。起業したばかりの企業は、一つ目の個々の能力・リソースが混沌としながら際立っているような場合が多いからだ。そして、スタートアップ企業の勝敗は、その企業を取り巻く環境(エコシステム)のcapabilitiesに大きく左右されることになるはずだ。

文=樋原伸彦

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