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2016.09.23

「家の資産価値」を長持ちさせる、住宅診断のすすめ[日本の不動産最前線 第5回]

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我が国の住宅市場は長らく新築主導の「新興国モデル」であったが、ここにきてようやく他先進国並みに住宅を評価しようといった動きが始まった。国が目論むのは他先進国同様「現実の築年数は無視し、事実上の築年数を見極める」ということ。例えば「築30年の中古住宅を、建物の専門家が確認したところ、事実上はまだ築10年であると判定できる」といった具合だ。

そうしたスキームが整備されると、50年たっても100年たっても価値を保ち続ける住宅が出てくる。一方で、やはりダメなものはダメ。建物コンディションが劣悪であればやはり従来通り25年でゼロになるどころか、まだ築10年程度であっても実際は20年相当であると判定されるケースも多く出てこよう。

このような、新しい住宅価格査定を実行するための一環として2016年6月3日、宅地建物取引業法改正案が国会を通過、公布日の6月3日から2年以内に施行されることとなった。その内容を簡単にいえば、建物のコンディションについて見極めを行うホームインスペクション(住宅診断)について、宅建業者に説明を課すというもの。具体的には媒介契約時、重要事項説明時、契約書交付時にそれぞれ、ホームインスペクター(住宅診断士)のあっせん可否や診断結果、確認事項などを定めることになった。

ホームインスペクションとは、住宅に精通したホームインスペクターが、第三者的な立場、また専門家の見地から、住宅の劣化状況、欠陥の有無、改修すべき箇所やその時期、おおよその費用などを見きわめ、アドバイスを行う専門業務。住宅市場が成熟した先進国ではこうした慣行が不動産取引の中に組み込まれているのが通例だ。我が国でもおそらく10年しないうちに、不動産売買の際にホームインスペクションを行うのはあたりまえになるだろう。


キッチンの床下を確認


ユニットバスの天井裏を確認

さてこうした事態を踏まえ、失敗しないホームインスペクターの選び方をお知らせしたい。まずはインスペクターの立場を確認したい。「そこに第三者性はあるのか」ということだ。

例えば不動産業者から派遣されてきた下請けのインスペクターが、はたしてあなたの味方となり、不動産業者に不利になるような診断・報告をするだろうか。またリフォーム業者などによる定額・無料のインスペクションはどうだろう。その先にリフォームの仕事を取りたいといったモチベーションによって、恣意的・意図的な診断や報告が行われる可能性はないだろうか。

こうした不安や疑念を払しょくするには「買い手であるあなたが、自らインスペクターをチョイスすること」である。

文=長嶋 修

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