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この結果の差には主に経営者として掲げたビジョンや目標へのコミットメントがあげられる。東京海上ホールディングスは以前の中期経営計画で修正利益や修正ROE、株主還元の目標を達成し、収益額拡大と資本効率向上を実現してきた。その流れを受けて、15年度に発表された新中期経営計画では、より大胆な戦略が期待されていた。市場は外部事業環境の不透明化もあり、不確実性の高い時代に立ち向かう経営姿勢を期待したが、持続的な利益につながる経営の土台固めに舵を切った。力強いリーダーシップを発揮するのではなく、調和型のリーダーのような姿勢を市場は評価しなかった。

次に興味深いのはシスメックスの家次恒社長だ。総合点93.5点、格付け「B+」である。15年11月に同社は日本IR協議会の「IR 優良企業大賞」に選定されている。医療に携わる事業者にふさわしい経営が評価につながった。透明性の高い経営で研究や開発状況も開示。投資家を意識した経営戦略や計画を立案し、その説明に力を入れる。また、投資家との対話に積極的に取り組む姿勢も評価につながった。さらに、対話を通じて得た声を自社の経営にフィードバックし、経営の舵取りに活かしている点も評価できる。1996 年に家次氏が社長に就任すると、シスメックスは16 期連続の増収、営業利益は15期連続増益を記録している。家次氏は経営者に求められる深い洞察力と適応性、そして客観性を備えている。

同様に、投資家との対話を通じて経営品質の向上に努めているのがアサヒグループホールディングスである。小路明善社長の評価は総合点86.5点、格付け「B」であり、上位20位にこそランクインしなかったが、自社のコアコンピタンスに立脚して確かな成果をあげる経営力は評価に値する。CSR 活動に対する外部評価も年々高まっており、社長自らが市場との対話を率先することで経営の質的向上に努めている点は市場関係者からも高い賛同を得ている。

今回のランキングからは、「成果を導くリーダーシップに富む」、あるいは「掲げた目標の実現に向けた真摯な姿勢」といった社長の資質が、企業価値を評価する上でいかに重要な因子であるかを読み取ることができる。

今、日本企業には、事業環境の変化による既存のビジネスモデルの陳腐化と真摯に向き合い、次なる一手を着実に打ちながら持続的に成長を遂げる力と、さらには企業価値の向上を導く社長の資質が求められている。創業以来積み上げてきた競争力を維持しつつ、市場との対話を通じて持続的に経営の質を高めていく経営者の姿勢が確実に問われている。


中川博貴◎フィスコIR取締役COO慶應義塾大学大学院経済学研究科修士課程修了。さまざまな国内上場企業のIR実務支援を経て、2014年より現職。

編集=Forbes JAPAN 編集部

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