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2016.09.19

スポーツ留学をビジネス化の台湾人起業家 有力選手の海外進出を促進

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台湾や中国といったアジアの国々では学歴が一生を左右すると信じられている。子供たちは学校のテストで進路をふるい分けられ、両親は子供をいい大学に入れようと、勉強漬けにさせる。

一方でバスケットボールのスター選手、ヤオ・ミン(姚明)やジェレミー・リンはスポーツで名を上げ、中国で有名人になった。チェン・ホーは「欧米の大学は入学願書に学校外活動の記載を求めることがある。その時、スポーツが大学の奨学金を得る手段にもなることを、中国と台湾の若者に知ってほしい」と語る。

彼は2013年に中国と台湾のバスケの試合をネットで放送する事業を始めた。そこに登場する選手たちは、米国のリクルーターの関心を引きつけている。

「事業を始めてから、欧米の大学の関心の高さに気付いた。我々は教育関係者や学生アスリート、その両親からフェイスブックで多くのメッセージや感謝の言葉を受け取っている」とホーは手ごたえを口にした。

彼の会社「Choxue」(球学)は、高校のバスケの試合を録画し、台湾のヤフーと中国の動画サイトDouyu TV(闘魚)に放映権を販売しておりこの4か月で290試合が放映された。また、関連サイトで選手情報を提供し、海外のリクルーターが見られるようにしているほか、ニューヨークのソフトウエア会社Krossoverと提携し、各選手の動画を作成し、ユーチューブにアップしている。

有力選手を海外にアピール。留学を支援

ニューヨークのある全寮制の学校は2年前、Choxueで見た18歳の台湾選手をスカウトし、留学にあたる資金の援助もした。また、米国の私立中も別の台湾選手を獲得した。

父と死別し、病気の母を故郷に残し、ホーは13歳で米国に移住して叔母と暮らし始めた。彼は米南部の学校でフットボールを始めた。言葉のできない新参者にとって、スポーツは共通言語の役割を果たした。クラスメートからスポーツの得意なアジア人と認知されたホーは、そこでやっていく自信を得た。

スポーツで文化の壁を突破できる

彼は自身の経歴を武器にハーバード大学の奨学金を獲得し、フットボールチームにも入った。ホーは「郵便局に行って、奨学金を提供してくれそうな大学に片っ端から自分のプレービデオを送った」と当時を振り返る。

ホーは卒業後、北京のNBA中国で勤務していた頃、中国人が「学歴=成功」と盲目的に信じていることに疑問を持ち、Choxueの立ち上げを思いついた。

「学歴で人生が決まるという考え方は間違っている。学校は人生の障害を乗り越えるための準備期間であるはずだ。その答えはマークシートの中にはなく、チームの一員になることで学ぶことができる」とホーは語る。

その後、台北の教会仲間がメディアサービスの立ち上げを支援し、ホーを知る投資家たちが資金を援助した。Choxueは今月、ベンチャーファンディングで83万9,000ドル(約8,618億円)を調達した。エンジェル投資家の中には、台湾元プロバスケ選手のブラッキー・チェン(陳建州)やアリババ副会長のジョー・ツァイ(蔡崇信)が名を連ねる。

Choxueのサービスの視聴者は100万人いるが、ホーは「まだ十分ではない」と言う。無名のプレイヤーばかりで、時間が予測できないマラソン形式でゲームが放映されることもあり、事業は安定していない。Douyuは長期契約の意思を示しているが、ヤフーが次年度も契約を更新するかは不透明だ。ホーは今後、他のチームスポーツを加えながら、Choxueを独自運営する道も模索している。

編集=上田裕資

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