アップルのティム・クックCEOは今年7月、「来年の今ごろには、アップルミュージックやアプリストア、iCloudを含むアップルのサービスの経済規模は『フォーチュン100』企業全体に匹敵するものになるだろう」と語った。
アップルは2016年7月26日、第3四半期(4-6月)のサービスの売上が59億7,600万ドル(約6,125億円)だったと発表した。前期の59億9,100万ドルと比べてわずかに減少したが、前年同期比では19%の増加だ。ビルボードは4月、アップルミュージックとiTunesの第2四半期の売上の合計を、同社のサービス部門の約13%にあたる8億ドル(約820億円)だと推測している。
8億ドルという金額は、アップルが世界の音楽ダウンロード売上の70%を占め、アップルミュージック会員の4分の1がファミリープランを利用しているとの前提で、算出された数字だ。ビルボードはアップルの会員数を当時1,500万人強と見積もり、今後1年で2倍に増えると予測した。
音楽ファンの間では現在、楽曲を個別に購入するのではなく、サブスクリプション形式で聴くスタイルが人気を集めている。アップルが以前のダウンロードスタイルに固執していたとしたら、競合サービスにユーザーを奪われ、音楽の分野でシェアを落としていたはずだ。
スポティファイの台頭がアップルを変えた
実際、アップルは2011年から2015年にかけて、スポティファイに800万人のユーザーを奪われた。これらのユーザーはiTunesからのダウンロードを大幅に減らしたというデータもある。スポティファイの台頭に直面したアップルは、この分野に参入せざるを得ない事情があった。
ストリーミングサービスではダウンロード販売よりも売上が低くなる。だが、スポティファイにユーザーを根こそぎ奪われてしまうよりはましだ。また、売上だけでなく、アップルがiTunesで築き上げたコンテンツビジネスの覇権にダメージを与えることは避けたい。
アップルのストリーミングビジネスへの参入は、大きな決断だったと言える。もしもアップルがアップルミュージックを開始していなかったとしたら、私たちは今頃、次のような質問をしていただろう。「アップルはなぜトレンドを予見できずに、ダウンロードに固執してしまったのだろうか?」