エジンバラ大学の科学者たちが開発した特殊な化合物を使うと、プリント基板の金を従来よりも簡単で安全に取り出すことができるという。プリント基板を弱酸性の液体に漬けて鉄を溶解させた後、この特殊な化合物を含んだ油状の液体を加えると、金だけを抽出することができる。
研究チームによると、廃棄された電子機器に含まれる金の量は世界中の金の7%にも相当し、今後その量はさらに増加する見込みだという。また、BBCによると2013年には金の年間生産量330トンのうち12%がテクノロジー分野で使われたが、個々のデバイスに使用される量は微量のため、リサイクルするのは経済的ではないという。「人類はこれまで採掘した金を全てリサイクルして使用してきたが、我々は歴史上初めて金を使い捨てにしている」とBBCは述べている。
2015年にワールド・ゴールド・カウンシルとボストンコンサルティンググループが共同で発表したレポートによると、1995年から2014年までの世界の金供給の約3分の1をリサイクルされた金が占めたという。また、1982年から2012年のトレンドを分析した結果、リサイクルの供給量に最も大きな影響を及ぼすのは金の市場価格であることが明らかになった。
経済危機の際には貴金属を換金する人が増えるため、金のリサイクル量が20%ほど上昇する傾向が見られたという。ボストンコンサルティンググループのパートナー兼マネージング・ディレクターのマサイアス・トーバーは次のようにコメントしている。
「金のリサイクル業界は大きな可能性を秘めていると同時に、多くの難題にも直面している。最大の問題の一つは過剰供給で、廃棄された電子機器からリサイクルされた金の量はこの10年で倍増している。各企業は生き残りをかけてM&Aによって規模の経済を追求するなどして自社の強みに磨きをかける必要がある」
エジンバラ大学のチームは、今回開発した技術によって金のリサイクル量を増やすと同時に、金採掘による二酸化炭素の排出量を減らして環境汚染の軽減に貢献したいとしている。
「今回の発見によって経済や社会に対して好影響を与えることでき、我々はとても興奮している」と研究をリードしたジェーソン・ラブ博士はプレスリリースで述べている。