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2016.09.12

9.11が米国に与えた健康被害、多種のがんからPTSDまで

Anthony Correia / Shutterstock.com


医療制度改革が犠牲者の慰霊に

犠牲となった人たちに追悼の意を捧げることは、多くの人たちにとっての癒しにもなるだろう。だが、どのような惨事であれ、それと向き合う上で最も効果的なのは、前向きな変化が継続していると分かることだ。

事件後、そうした変化(改善)は十分にみられているだろうか。この点については、米紙ニューヨーク・タイムズなども疑問を呈している。科学研究や環境衛生、医療、緊急対応について必要な改善点として挙げられるのは、主に次のようなものだ。

1. 惨事に見舞われた後、特に他者によって引き起こされた事件の発生後、影響を受けた人たちにはなるべく早く元の生活に戻るようにとのプレッシャーがかかる場合がある。

だが、急いで元の暮らしに戻ろうとすれば、ケガやその他の影響を悪化させる可能性がある。深い心の傷となるような出来事や自然災害の場合でも、交通事故などからの回復と同じようなプロセスが必要だ。

2. 環境衛生と慢性疾患に関する研究をさらに促進する必要がある。ニューヨークに住み、働く人たちに対し、大気中や水中、地中に含まれる有害物質はどのような影響を及ぼしてきたのだろうか?国内の他の地域にも、同様の有害物質の影響を受けた場所はあるだろうか、あるとすれば、その程度はどれくらいだろうか?

3. 惨事・衝撃的な出来事の発生時とその後において、巻き込まれた人たちのために、何を改善する必要があるだろうか。消防士、警官、医療従事者、その他の救助者たちが用いる装備や制服を改善すべきだろうか?これらの人たちに必要な事前の準備、新たに検討すべき救出行動手順とは何だろうか?

4. 精神保健のためのリソースやサービスを全米レベルで改善することは可能だろうか。多くの人がPTSDその他の精神的な症状に苦しむこと、専門医の診察などを受けられない場合があることは、社会にとって有用ではない。

5. 医療制度全体を改善するため、より組織的に取り組むことはできないだろうか?米国の医療制度は崩壊しているとの指摘も多い。その改善に向けた集中的かつ現実的な努力がみられることは、同時多発テロ事件がもたらした素晴らしい遺産になるのではないだろうか。

編集 = 木内涼子

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