キャリア・教育

2016.09.22 10:00

入社試験の是非、ポイントは「試験問題の中身」にあり


就職とは人が人を選び選ばれる作業である。大学入試とも共通する部分がある。面接によって「人物」を見極めようとする点で入試と違うように思われるが、最近の大学入試は推薦、AOから一発芸までかなり「人物」評価の比重が大きくなっている。
 
入試でも採用でも、人物評価が重要だといわれる。その通りである。だが、短期間に判断しなければならないとき、点数という定量基準と面接という定性基準のどちらに比重を置くべきなのか。大学教員時代にずいぶんといろいろな面接入試に従事したが、試験点数に勝る評価基準はなかった。

あえて極論を言う。入社試験では面接よりも試験点数を重視すべきである。ある程度以上の点数を取った就活生のなかから「人物」を選べばよい。企業も、「大学時代に遊んでいても関係ないよ」などと建前を言うべきではない。遊び呆けていた学生から凄い経営者が生まれていることは事実だ。が、稀である。だから目立つ。しかも彼らは社会人になってから人知れず猛然と勉強してきた。

ポイントは試験問題の中身である。即戦力を試すようなものは無用だ。学部や専門別に分けて出題し、大学時代にしっかり勉強したか、十分な知的インフラを備えているか、を見るべきだと思う。例えば、文学部で金融機関志望の学生には、為替や金融政策について問うのではなく「御伽草子に潜伏しているシュールレアリズム的感性を論ぜよ」のような問題がよい。

問題づくりは大変だが、「人財」を確保するコストとして、現状とどちらが高いかわからない。採用担当部署の知的ブラッシュアップにも格好である。

ただし。

折に触れて北京貢院の廃虚を見ることをお勧めする。科挙の試験場である。かつて天下の秀才たちがここで会試に臨んだ。何千倍もの競争に勝ち残った彼らは嘯(うそぶ)いた。「万般皆下品、惟有読書高」。これが近世中国の発展を決定的に遅らせたのである。

文=川村雄介

この記事は 「Forbes JAPAN No.26 2016年9月号(2016/07/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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