クラウド時代の寵児 「BOX」CEOに聞く、業界の未来像

クラウドストレージ企業Boxの共同創業者兼CEOのアーロン・レヴィ(photograph by Jan Buus)

クラウドといえば、DropboxやEvernoteなど一般消費者にはすでにおなじみだが、企業での導入はまだ始まったばかり。“クラウド時代の寵児”に、業界の未来像を聞いた。

「インタビューを始める前に、一言いわせてほしいんだ」

席につくが早いか、アーロン・レヴィ(30)はこう切り出した。

「僕らは日本のビジネスに強い関心を持っている。日本の企業文化を変えたいと思っているんだ。伝統的で縦社会とされる文化を、もっとフラットでオープンでコラボラティブ(協同的)なものに変えたい」

エネルギッシュでパワーがあり、情熱的ー。Box(ボックス)の創業者レヴィは、シリコンバレーのCEOに求められるカリスマ性を備えている。

2005年、レヴィは南カリフォルニア大学の学生寮で、友人とともにクラウドストレージ企業Boxを創業。のちに企業向けサービスへと転換し、昨年、ニューヨーク証券取引所に上場した。現在、約6万2,000社の顧客を抱え、米大手500社(フォーチュン500)の6割が同サービスを導入するまでに急成長を遂げている。

エネルギッシュなのは、自らの使命の大きさを実感しているからに違いない。レヴィは今、テクノロジー業界において「十数年に一度」といわれる大きな変革のまっただ中にいる。

その変革とは、社内情報システムにおける「オンプレミス」から「クラウド」への移行。つまり、自社内でサーバーやソフトウェアを保有・運用するシステム形態から、オンラインを介してソフトウェアを利用する形態へと移行することだ。

単なるシステム上の話と思うかもしれないが、基幹システムの構成を根本から変えるとなれば、多額の費用がかかるうえ、関連業務への影響も甚大である。それでも、利便性やコストなどの面で有利とされるクラウドの導入は確実に広がっている。

Boxはその業務のクラウド化を「ファイルの共有・協働」の側面から支援。スマートフォンやタブレットに対応するなど、クラウド時代のワークスタイルを意識したサービスとなっている。

そのクラウドへの移行状況だが、レヴィによると「大企業でも基幹システムレベルでの導入はまだ始まったばかり」。それでも、「アメリカではもうオンプレミスが戦略上、議題に上がることはほとんどない」という。
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増谷 康 = 文

この記事は 「Forbes JAPAN No.26 2016年9月号(2016/07/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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