大統領を決めるに留まらない、11月8日の選挙が持つ重要な意味

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1月20日に新政権が発足する際、3,000人を超える政府高官が入れ替わるが、これには閣僚だけでなく、副長官や次官、次官補、大使なども含まれる。米国憲法の下では、これらの高官は上院で承認されなければならない。また、憲法は、上院に、最高裁判所判事の候補者承認も義務付けている。

2月13日のアントニン・スカリア最高裁判事の死後、オバマ大統領は彼の後任としてメリック・ガーランドを指名した。

ところが、上院で多数派を占める共和党は、「オバマはレームダック(死に体)なので、指名は彼の後任者によって行われるべき」として、承認公聴会の開催を拒否している。これは、現在の米国政治における最も重要な論点の一つである。なぜなら、最高裁判所判事の構成が、アメリカの社会・政治・経済政策を、今後何年にもわたって形づくるからだ。

最高裁判事は終身制で、82歳、78歳、76歳の判事がいるため、次期大統領は少なくとも2〜3人の判事を任命することができるだろう。仮に、民主党の大統領があと1名を任命し、上院の承認を得られれば、民主党が有利になり、大きな意味を持つ。

実際、ジョージ・W・ブッシュの大統領選出の際の2000年の選挙では、最終決定は最高裁に委ねられ、その結果を決定している。オバマケア(医療保険制度改革)や中絶、同姓婚、アファーマティブ・アクション(差別是正措置)、選挙資金制度、その他の米国社会や政治の根本問題に影響する判決も最高裁判所が出している。

したがって11月8日の選挙は、単に次期米大統領を選ぶというだけではないのだ。上院や最高裁判所の構成を決定することにもつながり、今後何十年にもわたるアメリカの主要な政策に影響する可能性が非常に高く、重要な意味を持つのである。

文=グレン・S・フクシマ

この記事は 「Forbes JAPAN No.26 2016年9月号(2016/07/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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